松村 由利子のアーカイブ

問ひつめて確かめ合ひしことなくてわれらにいまだ踏まぬ雪ある

ぴあのぴあのいつもうれしい音がするようにわたしを鳴らしてほしい

サンタ役させてもらっていたのだと気づく日が来る 輝くツリー

さんさんと夜の海に降る雪見れば雪はわたつみの暗さを知らず

みごもりのとまどひ深しフレスコに横顔みせてマリアよマリア

傘の上ほどろほどろに雪こぼれ地蔵のこころにたたずむわれは

感情の波のまにまにあらはるるドリアン・グレイの老いし肖像

風を身にあつめて帰りたる夜にわれの内部に篠笛は鳴る

真直なる生は誰にもあらぬもの雪原を行きし人の足跡

ノルウェー産ししゃもぢりぢり炙りたり地球寒冷化を説く人もいる

うっすらと脂肪をつけてゆくように貯金を増やす一年だった

横にいるわたしはあなたのかなしみの一部となりて川鵜みている

光ふるさなか石原吉郎の断念を思ひ冬の草ふむ

小さき粒子の集まりに過ぎぬものなれど写真は語るまことらしきもの

女とはかかるものにて妹が晴着脱ぐとてまたおほさわぎ

モーニングコール十分前から待つ夫とローマ二日目いさかいをせり

あたたかきパンを齧りて口早にきみが「せんそう」と言う一瞬の闇

飴玉の包み紙をすてるまえに折りたたむひと そのくせつめたい

「気持ち塩を入れます」時のその気持ちよく分からない 白菜しんねり

触れられて哀しむように鳴る音叉 風が明るいこの秋の野に

惡意には二、三パターンあるけれど玉子のやうに見わけつかない

私といふ本に目次はありません好きな所からお読みください

読み終へて本を閉ぢれば作中の人らそのやうに在る外はなく

報道がテレビに移る過渡期なる四半世紀を新聞にあり

風中に公孫樹ちるなり幸福な王子が金を手放すように

ひとしづく、またひとしづく降り出でて秋に入る雨寒からず静か

今宵ひそと月と野良猫が登場すわが人生の野外舞台に

秋桜、秋明菊に女郎花 わが赤毛のアン恍惚と立つ

この地上にいまだ光の届かざる星の在り処を想ふ秋の夜

圏外のひとはドラマと呼ぶわれの歴史は選挙権なき歴史

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