コンテンツへスキップ
砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
松村 由利子
生きて在らば二百歳になるショパン心臓のみが祖国に眠る
ヨカナーンの首もなければ古伊萬里の皿はしづかに秋風を盛る
海よりもすこし薄めの塩水に身は満たされて一滴の海
ゆびあはせ小窓つくれば三角のあはひをよぎるあの夏の雲
ゆつくりと二人でのぼる長谷寺の石段一つひとつ大切
取るの字は耳を取るの意 月光のしじまの中に耳取られたり
ねえ武器をすべて捨てたらどうかしら足の踏み場がなくなる前に
日が差せば石はぱつくりと口ひらき太古の空の色を語れる
いまもなほ左脚を軸に立ちあがる突撃に移るときのごとくに
赤ちゃんの産着を着せてゆくように新刊本をフィルムで包む
二十五年勤めつづけて女たちまだ胸に飼ふ透明な鳥
秋空にさらすわが身は何物ぞこれっぽっちの裸おにぎり
投稿ナビゲーション
前のページ
固定ページ
1
…
固定ページ
3
固定ページ
4
固定ページ
5
…
固定ページ
13
次のページ