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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
石川 美南
ひつじ雲それぞれが照りと陰をもち西よりわれの胸に連なる
いくたびも廻転扉(ドア)に吸はれ入り芝郵便局に新しきコスモス運ぶ
映画三つ借りて来たりぬ飛び石のように老いゆくジュリエット・ビノシュ
わが生みて渡れる鳥と思ふまで昼澄みゆきぬ訪ひがたきかも
逃げた女逃げた心よ逃げた詩よ吾飲めば君たちが酔いにき
このゆびは人さしゆびと名づけられ星座を指した、戦旗を指した
なんだってこんなに死んだり生きたり山林に踏みつけてゆく腐葉土の嵩
怒るときも名差しができずいる父よ床の木目を見ながら怒る
一年を振り返りやがて口腔にひろがる路地を眺めていたり
のびやかな影を曳きつつ老い人は午後の日差しに出逢いつづけぬ
口内炎は夜はなひらきはつあきの鏡のなかのくちびるめくる
琥珀石透かすいつときゆふぐれは右の眼にのみ訪れぬ
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