黒瀬 珂瀾のアーカイブ

田に降りてまだ静まらぬ鶴(たづ)むらの白きゆらぎの中に踏み入る

積みてある貨物の中より馬の首しづかに垂れぬ夕べの道は

しきたへのテンピュール枕の窪みほど凹んで帰れ(殺さず、死なず)

終夜業とどろく露天の工場に立ちつつ思ふ突撃のさまを

真夜中のバドミントンが 月が暗いせいではないね つづかないのは

見せあうものは悲しみのたぐい黒衣きて雪野を遠く来る人に逢う

twilight in L.A./golden shining reflections/on asphalt pavement/the city becomes holy/everything forgiven

風を従へ板東太郎に真向へば塩のごとくに降りくる雪か

まひるまのひかり食べかけのポテトチップスに贅肉のごとき影なせり

さりながら死ぬのはいつも他人なり夢野久作荻野久作

この子悲しや悲しやこの子朝なさな走る電車の中に自慰せり

ヒト以外ノモノノ生(シヤウ)ニハ使命有リ晩鴉(バンア)ノ夫(ソレ)ハ感傷ノ駆除

こわいのよ われに似る子が突然に空の奥処を指さすことも

溶けあうものすべて溶けあいからみあう声が木馬のごと揺れるなり

眼路のかぎりみはるかす冬黄昏の地平どこまでわれらが地球(テラ)

寒へ向かふ季節(とき)にして軒の干し柿は含羞の粉(こ)を加へゆくなり

塩振りてひとりの轢死払ひ去る夜半の詰所(つめしょ)に食に戻りぬ

何ものかを守るかたちに擦る燐寸バーナーに湯を沸かさむとして

のどを疾み苦しき朝は― 鳥の影 われより低く飛べるを見たり

満ち潮がかえりくるころ船たちは橋くぐり抜け川船となる

A god has a “life file”, which is about the collapse of my cool core. (罪色の合わせ鏡のその奥の君と名付けた僕を抱き取る)

バスのドア開かるるたびにわが足に冬の日が差す心渇きて

何待ちしひと日の暮れぞいたはりのごとくしづかに靄たちてくる

父なくば育たぬ種など滅ぶべし月下を豹の母と子はゆく

わが生に歌ありし罪、ぢやというて罪の雫は甘い、意外に

今日は寒かったまったく秋でした メールしようとおもってやめる する

寝室に行けばわれよりも早く来てベッドに待てる月光に触る

杉爺(すぎじい)の中のこだまを呼びにきて若きあかげら若き首をふる

花火咲き散りにしのちに隕ちてくる闇の重さに母と寄りそふ

しよんぼりと霧に飢ゑをるえんとつのまるみなり日暮れはこころも猫なり

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