Archive for the '今日の一首鑑賞' category

体重をかけながら刃を圧してゆく受け入れられて息の漏れたり

廃仏となりてふげんは十余年いまだ御身に冥王を抱き

いもうとの戒名はやく憶えおり水に死す「遊水善童女」五つ

人生を悔いたくはなしわたくしも原爆投下せし老人も

みづからの手に織りてゆく未来とぞ思ひしころの鍵が出てくる

頭[づ]のなかに牛がへる鳴く沼地もち頭のそとがはを理髪されをり

萬葉ゼミいよよすたれて筋よきに狙ひをさだめ拉致するといふ

はづかしいから振りまはした花のやうに言ひにくいことなんだけど

全線をPASMOに託し電車賃という距離感を喪いにけり

志野に活ければ網目透く花貝母春のひと日をうつむきて咲く

同じ目線に語らむとして屈みたり幼子もかがみわたしを見上ぐ

他人のみ楽しそうに見ゆるとき花降りきたる心のなかに

よそゆきの母としばらくぶりに会ふ黒いテリアの散らばるブラウス

暴行に及んだことがない僕の右手で水はひねれば止まる

かの批評うけしよりはたと歌成らず心をふかく嚙まれてゐたり

われの名を記して小さき責任をとりたり窓のオリオン光る

ふららこという語を知りてふららこを親しく漕げば春の夕暮

北を指す針だと思ふぼくたちは クリアするのを忘れたゲーム

若き日の過誤かへるまで畳目のしづかさにしむ秋雨の音

振り上げた鎌のかたちの半島の把手あたりにひかるまほろば

わかくさの妻の日々よりもどりたる友もわたしも少女ではなく

私ではない女の子がふいに来て同じ体の中に居座る

好まざる昔語(むかしがた)りし我つひに結社の稗田阿礼(ひえだのあれ)かと嘲ふ

性別がふたつしかないつまらなさ七夕さやさやラムネを開ける

邸にはほど遠き家ごめんなさい父母舅みなは住めない

〈女は大地〉かかる矜持のつまらなさ昼さくら湯はさやさやと澄み

工事現場の荒れたる地表おほひつつ銀を展(の)べゆくさらの春雪

スクラッチノイズの入った曲を聴く みんなどこかへ帰りたい夜

縄跳びの描ける繭にひとりずつ児らはおのれを閉じ込めて跳ぶ

ひとつずつボタンをはめる静けさは白亜の街のさすらいに似て

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