Archive for the '今日の一首鑑賞' category

たまさかに共棲はじめた六十歳代皆若き日の海市見せ合う

にはとりも備品であれば監査前に何度もなんども数をかぞへる

残酷な童話は語り尽くしたと足腰伸ばすあたしの老婆

兵器考案その手すさびに創られて撃たれつづけるコの字型針

栃の実を拾へる童子見張りをるけもののけはひ、紺青の時間[とき]

新春の空の深さをはかるべく連なる凧を沈めてゆきぬ

扇風機を胸に抱きてはこぶときしづかにまはる透明の羽根

我にまだ死刑を肯(うべな)う心あり窓に当たりて窓伝う雨

iPhone谷間に挟めばパイフォーン着信音に胸ときめいて

生年に付く〈~〉(なみきがう)生きゐるはなべて尻尾を揺らしさまよふ

わたしの影が私の鍵穴であるやうに霧雨の空を飛べる黄揚羽

その旅は行けなかつたと言へぬまま紅葉はどうかと聞かれてゐたり

大輪の花火はじける五億年後にぼくたちの化石をさがせ

矜持なきわが性なれば昼間より咲くゆふがほの花を見てをり

客電が落ちれば良夜/河岸に劇場〈銀河〉現れて消ゆ

桜吹雪のなかにカメラを翳しいる娘のからだ少し傾ぎて

停電の夜に着せたる赤い服あらたな犬に着せて歩めり

くちばしの散らす花びらひよどりをひかりは誘ふ次なる枝へ

五年目の一斉捜索 私の時は五日経ったら忘れて欲しい

袖振りあふの多少の縁と五十年思ひ来たりて不便あらざりき

燃えたぎる鍋を見すえて だいじょうぶ これは永遠でないほうの火

はる四月白くさびしき花水木もうすぐ夫のなずき削らる

見るかぎり赤信号となる道を渡りゆくなり影もたぬもの

棚の本を読みて箪笥の服を着て足るべし残生の心と体

雲梯のうえから見ていた校庭にわたしがいないことの正しさ

こぼされた砂糖の最後のひとつぶのかなしいひかり降りしきる ガザ

あおむけに書けばかすれてゆくペンのちいさなちいさなボールをおもう

ふかくふかく潜る鯨のしづかなり 酸素マスクに眠りゐる人

氷[ひ]の熱は氷室に満てりみまかるとみごもるの語のふしぎな相似

かはせみは雫こぼして枝にもどり水中の魚一尾消えたり

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