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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
カテゴリー:
一首鑑賞
秋の夜はもの冷えやすし爪切りも鋏もひとをおもふ心も
長雨の明けてとんぼの高く飛ぶいのち余さず秋空をゆけ
捨てられるための資料を作ったら怒鳴られるための電話をかける
変はり得ぬわれを率ゐて十月と九月をつなぐ真夜を渡りつ
話す程に食ひ違ひ行くこの電話早く切らむと受話器持ち換ふ
つぎつぎに「おじやましました」と言ふ声の聞こえて息子もゐなくなりたり
栗を剝く人のうつむきあるときは知らずの奈落覗きつつ剝く
ひと一人ひと生に使ふ水の
量
かさ
せきれいは小さく水を飲みそむ
現実の迂回路であるこの坂に猫の死体がいつまでもある
敗戦処理投手のやうに引き継いでデスクのうへの灯をともしをり
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