Archive for the '今日の一首鑑賞' category

少しやさしくされると少し気になってしまう単純 靴下を脱ぐ

淡雪にいたくしづもるわが家近く御所といふふかきふかき闇あり

なんでなんで君を見てると靴下を脱ぎたくなって困る 脱ぐね

等伯の松林図けふ観にゆかむ朝のとこにきたる雨音

第三次世界大戦終戦後懇親会に出席します 御欠席

動かねばおのづからなる濃き影の落ちてをるなり池の鮒の影

赤紙をもらった人だけが見れるめちゃくちゃおもしろい踊りだよ

独楽は今軸かたむけてまはりをり逆らひてこそ父であること

おそらくは電子メールで来るだろう二〇一〇年春の赤紙

地の上は暮れゆくばかり振りむけば出で来し穴に光の増しぬ

春の夜の夢ばかりなる枕頭にあっあかねさす召集令狀

ひなたより入り来し赤いセーターの少女つかのま陽のにおいせり

注文をするとき笑みているわれを肉屋の鏡のなかに見出でつ

いや赤き火鉢の火かもふつふつにもゆる怒りを抑へつつ見る

指さしてケーキ買ひゐる夫を見つ通り雨降る駅のおもてに

初詣帰りの道に野の草のハーブ引き抜き妻は手に持つ      

シクラメン選りいる妻をデパートに見て年の瀬の街にまぎるる

元日すでに薄埃あるテーブルのひかりしづかにこれからを問ふ

時刻表は褪せて西日に読めざりき岬の鼻に待つ風のバス

オリオンはさやかに高しわれ二十歳みにくけれどもおもてを伏せず

死の時間近づく人に「おだいじに」とはいへぬただ礼(ゐや)にて離る

マンホールの蓋を持ち上げ残雪を捨てて世界はまた春になる

病廊を清掃しゆく機器の音遠ざかり日曜の夕ぐれが来る

角砂糖角[かど]ほろほろに悲しき日窓硝子唾[つ]もて濡らせしはいつ

おおよその若き日を知る友どちと湯葉のお煮染め茶の間に食ぶ

よろこびが引いていくとき湖面から静かに現れる人力車

太陽を迎える準備はできている菜の花畑に仁王立ちする

眠る間にすべてを忘れますように 百合の香りがしている廊下

当事者が切り出しくれば長くなる無断複製をされにし経緯

あかときに目覚めし人は隣りゐる老女の貌を見るにあらずや

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