Archive for the '今日の一首鑑賞' category

浦の名をうなゐに問へば知らざりき少女に問へば羞ぢて答へぬ

フジワラちゃんと呼ばれることもうべなえばああなまぬるき業界の風

空白について考えようとしてその人が立つ窓辺を思う

野口あや子。あだ名「極道」ハンカチを口に咥えて手を洗いたり

朝に飲むコップの水のうまきこと今飲むごとく話す父はも

ハンカチを落としましたよああこれは僕が鬼だということですか

<石炭をば早や積み果て>て近代の暗礁に乗り上げたる船は

君でない男に言われ立ち止まる「あなたが淋しい人だから」など

妻病みて七年たちぬ非日常が日常となるまでの歳月

俺は詩人だバカヤローと怒鳴つて社を出でて行くことを夢想す

地下デパートのゆき止まりに鸚鵡みじろがず人寄ればわづかに目開けまた閉づ

来ないでよ母さんだけが若くない お前に言われる日がきっと来る

雲よむかし初めてここの野に立ちて草刈りし人にかくも照りしか

「駄目なのよ経済力のない人と言われて財布を見ているようじゃ」

さくらばな陽に泡立つを目守まもりゐるこの冥き遊星に人と生れて

変人と思われながら生きてゆく自転車ギヤは一番軽く

ちる花はかずかぎりなしことごとく光をひきて谷にゆくかも

新姓を貼り付けられて生き延びるこのベランダは終着点なり

今宵、月にシルバーベッドの影が見え老いたる鶴がひとりづつ臥す

「自由を謳歌」ってひとりぐらしのトイレにも鍵かけているわたくしが、か

浅草の地下に溜れる浮浪児を父の肩より見しを忘れず

恋愛にはるかに遠き関係として呼び出されたること多し

靴音となり人のゆく地下道の靴音の群へわれも降りゆく

ひと憎むことほど易きことはなく松の針ふる下を歩めり

リストラというよりかつての日本語は端的率直馘首と記す

食ひ終へて食ひ飽かぬとぞわが母のわれを憎しむ目に力あり

眼にふれて時にひかるは春の日に蜘蛛の糸など飛ぶにかあるらし

生涯憎み続けるといふ一言をむしろなぐさめとして覚めをり

原発が来りて富めるわが町に心貧しくなりたる多し

すがれゆくパルテノン多摩若すぎて憎まれるうちに教授になりたい

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