Archive for the '今日の一首鑑賞' category

がらんどうの倉庫のやうに立ちつくす ペットボトルの水がもうない

直立せよ一行の詩 陽炎に揺れつつまさに大地さわげる

ジャンヌ・モローのややよぢれたる唇のやうな小説読みをり深夜

木製の銃でデコイの水鳥を撃ち抜いた、って感じがしたね

健やかなドナーになるため散歩する朝にみつける黄(きい)のたんぽぽ

一人の子を呼ぶとてけさも五人のみなの名を呼び子にはやされぬ 

小学生のふりしてきたといふやうに子はランドセルすとんと落とす

一つ二つ小石にまじる青蜆萌えいづる春の色にもあるかな

帰つて来たと不意に思うて不思議なり砂を踏みつつ海に近づく

遂ぐる日をしらねはろけき祈りもて久遠におのれを繋ぐといはむ

炊き出しの大鍋ぐらぐらぐりとぐらカステラケーキを焼くなら今だ

男系の孔子三世の墓ありて墓なき女は空にかがやく

フェミニズムってこんなことだっけ朝のみの女性専用車両が走る

売るほどに霞みゆきたり縁日を少し離れて立つ螢売り

朝戸出に鞄を重く感じたり「鎧が、けふは」の木曾殿おもふ

鈴を産むひばりが逃げたとねえさんが云ふでもこれでいいよねと云ふ

ゆふぐれはピアノをさらふ時刻なり子も友の子も弾きにしハノン

ほほゑみを示す顔文字とどきゐつ鼻のあたりで改行されて

繭のような白き時間に頭下げお椀に受ける花びらごはん

漠さんの春の笑顔をおぼえておくそうぼくたちは思うここにて

わが内に湯浴みしている一粒を何と呼ぼうか春雨の降る

とどろきて風吹きゆする硝子戸に紅はきよし沈丁花のつぼみ

日露戦争の祝勝として植ゑられしソメヰヨシノの花のさわがし

虎猫やけだし荒もの前掻きて後背高むる眼のすゑどころ

入学式のひかりに満ちた校庭の誰も時空を逃れられない

海ふかく沈める艦がかぎりなき潮のながれに音ひびくとぞ

震災より百日過ぎてようやくにミネラルウォーターのCM流る

思惟像のあてどなき掌のかなしみよ春を含みて雨流れたり

つなぐほどさみしいはるのゆびさきをそれでもかさねあって、みずいろ

おおおおお、お前は見たか百房のみのれる丘の公開処刑

月別アーカイブ


著者別アーカイブ