Archive for the '今日の一首鑑賞' category

十代の自分を恋えりローリング・ストーンズ聞いて幸せだった

筒型のMRIに万歳のかたちにありて想ふ回天

まひまひは負ふ家さへも涼しげに海鳴りきこゆる石塀をゆく

兵隊サンの妻でも母でもない幸福を時々忘れてしまふ さくらよ

蛇臭き雨空なれど君は言はず蒸暑く光る泥道急ぐ

そのまま行かば危き道なりと知りつつ来たりまさに到りぬ

こんなにも広くて大きな腕がほし明石海峡大橋は父

八月の耳はとがれりバケツ打つ雨音しきりにポツダムポツダム

すぎさつた時間のなかに和服着るすずめが居りてときをり踊る

「父を夫を英霊と呼ぶな」プラカード高く掲ぐる敗戦記念日

潮曇るむかうの島をねむらせてまひるまの空に游ぶアヂサシ

ペルセウス流星群にのってくるあれは八月の精霊(しょうりょう)たちです

きたぐにの夏空白く抉り取りグライダーわが頭上飛び越ゆ

真夏、還つて来たのは小さな石だつた。小石のままの母のおとうと  

本を焚き詩人を焼いてしまつたら、爽やかだらう。(都市の)明日も 

二十九歳父の軍服は夏のまま七十回目の八月迎ふ  

あけつぱなしの手は寂しくてならぬ。青空よ、沁み込め

大空のホールにみえざる群衆の椅子をひく音夏の雷鳴  

たなぞこの上にのせたる見もあかぬ金剛石よ国の気は寄る

夏帽子振るこどもらよ遺影なる伯父とことはに戦闘帽かぶる  

夏山の嶺かさなりてうちつづくみづうみべりに妻子らとゐる

蝉時雨見えざる壁を作りてはその内側に鳴き注ぎたり  

ローソンの袋の皺に眼はありてじいつと俺の方を見てゐる

ミスをして上司にひどく叱られた今夜男に会つたらだめだ  

喉元に銃のはさまりし夢さめてかなかなは暁を鳴きそめにける

教科書は絶対と思つてゐた夏のしづかな教師の頸太かりき  

常よりも敵のピッチののろしとぞ見るはすなはち進み抜きたる

いまだ掬はぬプリンのやうにやはらかくかたまりてゐるよ夏の休暇日  

三河地震に宿舎はつぶれ二ヶ月余余震におびゆる日の続きたり

ふる雨にこころ打たるるよろこびを知らぬみずうみ皮膚をもたねば  

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