Archive for the '今日の一首鑑賞' category

おたまじやくし小さき手足生えそめて天地に梅雨のけはひただよふ

頭ぶつけ胃はおどるとも砂漠ゆくバスはうしろがいちばん落ちつく

ひとしきりもりあがりくる雷雲のこのしづけさを肯はむとす

みちのべに埃(ほこり)をあびてしげる草秋は穂に出(で)て名はあるものを

梅雨雲にかすかなる明りたもちたり雷ひくくなりて夏に近づく

一日が過ぎれば一日減つてゆくきみとの時間 もうすぐ夏至だ

握っても摑みきれないかなしみの十指ひらいたままに果てにき

君がふと振り返りしを夜の駅の窓にかくれてわれは見てゐつ

地獄酒極楽酒のけじめなく二升たちまち火の粉となりぬ

花々に埋もれてわれも風のなき柩のなかにひと世終へんか

まむかへば天そそり立つ足助山寄りくるごとくいよよきびしく

つくづくと君男なりいち早くカワセミ見つける動体視力

いづくにかわれは宿らむ高島の勝野の原にこの日暮れなば

プリントを授業で配るそれだけでありがとうを言う子供らがいる

やがて来む終の日思ひ限りなき生命を思ひほゝ笑みて居ぬ

たて笛に遠すぎる穴があつたでせう さういふ感じに何かがとほい

平安のかたちを保ちゐし雲の夕されば涅槃のいろにくづれぬ

老眼鏡掛くれば延びる生命線このさびしさに慣れねばならぬ

天道をうつらうつらと渉りゐる日はふるさとへこころをはこぶ

昼どきになればスパナも錆捻子も散らかせるまま飯くひにゆく

雨暗く/部屋の明かりが輝けり/甦りといふことを思へる

敷くためにあらずからだをくるむための白きシーツをときどきおもふ

貴重な終身刑の残り日を素直に生きむひと日ひと日を

でで蟲の身は痩せこけて肩書の殻のみなるを負へる我はも

まだまだとおもいてすごしおるうちに はや死のみちへむかうものなり

夕がたの日影(ひかげ)うつくしき若草(わかくさ)野(の)体(からだ)ひかりて飛び立つ蛙等(かはづら)

おもしろきこともなき世におもしろくすみなすものは心なりけり

狂うことなくなりてより時計への愛着もまた薄れゆきしか

君がためつくす心は水の泡消えにし後ぞすみ渡るべき

十六歳の君の写真が見下ろすは柩に眠る十八歳の君

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