Archive for the '今日の一首鑑賞' category

白つつじゆたかに昼の日は射して蝶、蝶を追ひ人、人と行く

捨て猫の瞳の底に銀の砂 四月の雨はふいに降りやむ

そうですか 怒鳴り続ける声があり頷きながら思う白鷺

五月の樹をゆるがせて風来たるのち芯までわれを濡らす雨あれ

戦争を知らぬ世代が老いてゆく不安なタンポポ空ばかり見て

小道さへ名前をもてるこの国で昨日も今日も我は呼ばれず

寂しさの根源として縁側の日なたに出でて正座する人

民族が違ふと言はれ黙したり沖縄(うちなー)びとにまじりて座せば

老いさびし犬の散歩に小太りの猫の薄目や 法案通る

パチンコをしつつ嬉しもニイチヤンと隣の台の男に呼ばれ

つけ捨てし野火の烟のあかあかと見えゆく頃ぞ山は悲しき

(きのこ)たちの月見の宴に招かれぬほのかに毒を持つものとして

衰ふるわが眼のために咲きそむるミモザの黄なる大き花房

ひらがなで名を呼ばれたりはつなつの朝のひかりのテーブル越しに

浦の名をうなゐに問へば知らざりき少女に問へば羞ぢて答へぬ

フジワラちゃんと呼ばれることもうべなえばああなまぬるき業界の風

空白について考えようとしてその人が立つ窓辺を思う

野口あや子。あだ名「極道」ハンカチを口に咥えて手を洗いたり

朝に飲むコップの水のうまきこと今飲むごとく話す父はも

ハンカチを落としましたよああこれは僕が鬼だということですか

<石炭をば早や積み果て>て近代の暗礁に乗り上げたる船は

君でない男に言われ立ち止まる「あなたが淋しい人だから」など

妻病みて七年たちぬ非日常が日常となるまでの歳月

俺は詩人だバカヤローと怒鳴つて社を出でて行くことを夢想す

地下デパートのゆき止まりに鸚鵡みじろがず人寄ればわづかに目開けまた閉づ

来ないでよ母さんだけが若くない お前に言われる日がきっと来る

雲よむかし初めてここの野に立ちて草刈りし人にかくも照りしか

「駄目なのよ経済力のない人と言われて財布を見ているようじゃ」

さくらばな陽に泡立つを目守まもりゐるこの冥き遊星に人と生れて

変人と思われながら生きてゆく自転車ギヤは一番軽く

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