Archive for the '今日の一首鑑賞' category

生ひ出てそこを動かぬ木草らのもの思ふ日暮れ白き十薬

一歳のむすめと乗りて鞦韆(しうせん)の果てざるひびきふるへつつ聴く

ひと日樹をしきりにゆすりなにごとか問ひゐし風もいつしか去りぬ

おとうとが喪服持たざる心配を息ぎれしつつ母は言うなり

誰が決めし「母の日」というおろかさにワインがとどき日傘が届く

無理をしてほしいと言えば会いにくる深夜かなしく薔薇を抱えて

勝ち負けの淡くなりゆくわが生か 水木の花もいつしか終わる

パン選ぶ君のすがたを玻璃越しに見つめるときのわれは行人

交わってきたわたくしを抱くあなた キャベツのようにしんと黙って

あたまでは完璧にきみが描けるからときどきわたしは目を閉じている

男(お)の子とは空を漂ふ鯉のぼりコントラ・ヴェンテにわが身曝して

しらさぎが春の泥から脚を抜くしずかな力に別れゆきたり

偶然を恃むことすでになくなりてゆきずりの店にスィートピー購(か)ふ

野生種の麦吹く風のつややかに男の腕に体毛そよぐ

いくつもの昭和が過ぎて夜ふかく東野英治郎の赫きくちびる

花水木いつまでも見上げる君の 君の向こうを一人見ており

草ボケの花は江戸期の飯盛(めしも)りの女の唇(くち)の紅色(べにいろ)に咲く

科学者純 焚けよと綴りし恋文が展示ケースに曝(さら)されてをり

湧きあがる清水匂えるわさび田のみどりを透きて一輪車のレイナ

ジュリアナ様と阿佐緒を称え綺の側に付きし石原純の不惑や

恋ふは乞ふましろの梨の花のもと雨乞ふ巫女か白く佇ちたる

重ねればやわらかい指ぼくたちは時代錯誤の愛を着ている

こりもせず光のほうへ手を伸ばす私のような蔓 クレマチス

そこがあなたの岬でもあるというように光翳ろうなかの頬杖

三月の暦が壁にぶら下がる君の部屋より見ゆる葉桜

父ならぬ夫ならぬよはひの人と見る散らんとしていまだ散らざるさくら

橋の見るゆめのようなる町並みの眩しきなかをほんやら洞へ

清らかにカンガルーポケットに指かけてああ服の下には体があるね

ハルウララ敗れることが義務であるごとく走りき泥濘の馬場

ゆきたりと知りて極まるさびしさのなか揃へある赤きはきもの

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