2009年02月のアーカイブ

婚姻のつめたくひかる虹のため足らざる色を持ち寄りにけり

ヒヤシンスの根の伸びゆくをみつめいる直線だけで書ける「正直」

釉薬を身体(からだ)に巻きて佇つごとし近づくわれをかすか怖れて

杉花粉に荒るるのどより朝まだき美しきあかき痰は出づるも

歌詠みの心は憎し君の詠む女はわれを超ゆわれを消す

春霞山は新たな教科書の匂いのように横たわるなり

髪あげてやや美しと思ふときひとと別れむ心定まる

蝶の翅ならば三日の距離ならむ雨水(うすい)を過ぎて手紙は書けず

逢ひたいと思ふ、思へば昼も夜も緋の澱を手に掬ふきさらぎ

春塵をうっすらと置くポストぬぐう偽名も筆名も使わず生きて

どこでもないところへゆきたい あなたでなければならないひとと

啄める林檎の肉のたっぷりとありてひそけくながれゆく時

灯消し稚き妻が息づきぬ窓の外に満ちし冬の月光

劣情が音立つるほど冷えている。きさらぎ、デスクワークのさなか

かなしくも恋と知る日はかたみにも悔いて別るる二人なるべき

そらいろの小花にとりかこまれながら電信柱けふも芽ぶかず

脱ぎ捨てた服のかたちに疲れても俺が求めるお前にはなるな

再び若くなることあらじ昨年よりも幹太く濃く椿ひらきぬ

恨みの数つもりて老いは苦しきにいにしへびとは太鼓打ちたり

ねむらないただ一本の樹となってあなたのワンピースに実を落とす

銜(くは)へ来し小枝はくちばしより落ちぬ改札を抜け君に笑むとき

指半分出る手袋をして会えば指半分だけが見つめられたり

甘えたき気持ち悟られまいとしてイルカのやうな明るさを見す

やや冷えしブリ大根を熱き飯(いひ)に載せてぞ食うぶ春立つあしたを

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