2009年04月のアーカイブ

野生種の麦吹く風のつややかに男の腕に体毛そよぐ

いくつもの昭和が過ぎて夜ふかく東野英治郎の赫きくちびる

花水木いつまでも見上げる君の 君の向こうを一人見ており

草ボケの花は江戸期の飯盛(めしも)りの女の唇(くち)の紅色(べにいろ)に咲く

科学者純 焚けよと綴りし恋文が展示ケースに曝(さら)されてをり

湧きあがる清水匂えるわさび田のみどりを透きて一輪車のレイナ

ジュリアナ様と阿佐緒を称え綺の側に付きし石原純の不惑や

恋ふは乞ふましろの梨の花のもと雨乞ふ巫女か白く佇ちたる

重ねればやわらかい指ぼくたちは時代錯誤の愛を着ている

こりもせず光のほうへ手を伸ばす私のような蔓 クレマチス

そこがあなたの岬でもあるというように光翳ろうなかの頬杖

三月の暦が壁にぶら下がる君の部屋より見ゆる葉桜

父ならぬ夫ならぬよはひの人と見る散らんとしていまだ散らざるさくら

橋の見るゆめのようなる町並みの眩しきなかをほんやら洞へ

清らかにカンガルーポケットに指かけてああ服の下には体があるね

ハルウララ敗れることが義務であるごとく走りき泥濘の馬場

ゆきたりと知りて極まるさびしさのなか揃へある赤きはきもの

今われは樹の眼(まなこ)なり空中に伸びたる蝶の舌がちかづく

ルーベンスの薔薇色の雲わが手には君の重たき上着が眠る

いびつなる三叉路に立つ風の夜いづれの道もわたくしを呼ぶ

この夜更(よふけ)さくらさくらを歌ひなばいかなる腕にわれ抱(いだ)かれむ

かんぺきなきゅうたいとなる夢をみていきつめているたんぽぽわたげ

春の海。誰も見てないテレビから切れ切れに笑い声は響けり

らくがきの「かじ山のバカ×一〇〇〇〇〇〇〇〇〇」のかじ山を思ひ出せず

指切りのゆび切れぬまま花ぐもる空に燃えつづける飛行船

冴えわたる四月晴朗どのような顔か母であり母でなきわれは

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