2009年08月のアーカイブ

ぶどう・デラ 一房もぎて秋の陽に妊婦はあおき水透かしたり

野イバラが素足に痛くて今きみをみたら泣いてしまうなきっと

恋人をそれぞれの胸が秘めている不思議さ行き交う人のシャツ見る

木の匂いする言葉かな今君がわが耳近くささやきたるは

はてしなき夢魔におそはれゐるやうな一生(ひとよ)とはいへ 冷涼の秋

我のみが知る記念日は数ありてそのたびひとりのさびしさに気付く

梨に刃を差し込みながらたしかめるどこまで君をわかっているか

男(お)の幼なわが膝に顔を打ち伏せてしばらく居たり何をも言わず

人はみな見えない猿を背負(しよ)つてゐる華氏一〇二度の空に圧(お)されて

きみが父となる日の暮れの灰色の魚とおもうわがひだりうで

歳月の中にそよげる向日葵の幾万本に子を忘れゆく

いとけなく泣きて帰りし裏の辻今病む父を尋ねゆく道

あの胸が岬のように遠かった。畜生! いつまでおれの少年

わが額にかそか触るるはわが髪にあらねはるけき岬(さき)に潮(しお)鳴る

ながめつつながめ尽くせず夏暮るる樹樹の繁りのやどす表情

水族館(アカリウム)にタカアシガニを見てゐしはいつか誰かの子を生む器(うつは)

暁(あけ)までをひとり起きゐてかく道に佇む幾度 生は闌(た)けつつ

日々われらやさしき嘘と嘘にてもよきやさしさにまみれて過ぐす

YEN再びマッチョになる日を夢みむか夏の喉(のみど)を降るバーボン

月も日も吾等が爲の光ぞといひてし日より天地を知る

芙蓉さきぬ ほのあかし ここ祖(おや)たちの激しき生命(いのち)のあつた場所にて

かのときのなつくさはらをかけぬけし風がうそぶく――さんさしおん

それからはただひたすらにたかなりて轟く夏の雲となりしが

ヘヴンリー・ブルー 花であり世界でありわたくしであり まざりあう青

ざっくりとパイナップルを割くときに赤子生まれて来ぬかと恐る

ああ僕を誰の代はりにして君は抱かるる朝の葉月の茘枝(れいし)

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