2009年12月のアーカイブ

空のない窓が夏美のなかにあり小鳥のごとくわれを飛ばしむ

人生のもつともつらい瞬間は過ぎたのだらう 内装は蒼(あを)

愛恋のはざまむなしも雪崩つつけぶるがままに幾夜ありけむ

一二月二十八日午後二時のひかりのなかに二つの林檎

こともなく陽の照れる街を須臾に見て坂をくだりをり逢ひにゆくなり

二千年          前、に生まれた嬰児の(さう!)血の色のリボン、を、結ぶ

「母よかかはりなし」と言ひにけり若きナザレの聖工匠(たくみ)の子も

地下のバー酔ひやすくして己が手に残る時間を人ら埋(う)もるる

あらはなるうなじに流れ雪ふればささやき告ぐる妹の如しと

まだ乾かない水彩の絵のやうに雪くる朝の雲がにじんで

亡き父のマントの裾にかくまはれ歩みきいつの雪の夜ならむ

寒波来て眠りの早き街遠く暴走族よごくらうである

十人殺せば深まるみどり百人殺せばしたたるみどり安土のみどり

メールでは加藤あい似のはずだった少女と寒さを分かつ夕暮れ

母たちは乳母車より手を放すセガンティーニの絵に見入るとき

みんな仕返しが大好き極月の戯(そばえ)きらきらこうずけのすけ

まぎれなく昨夜のわたくし其処に在り裂きたる紙のうち重なれば

ガス室の仕事の合ひ間公園のスワンを見せに行つたであらう

アンデルセンその薄ら氷(ひ)に似し童話抱きつつひと夜ねむりに落ちむとす

敗れたる國といへども涙ふきゐるをとめあり映畫館にて

妻の手紙よみつつおもふ互(かた)みなる吾の手紙も悲しからんか

冬という季節がわれに大げさな息をさせたり向かい合うとき

モニターにきみは映れり 微笑(ほほゑみ)をみえない走査線に割(さ)かれて

さやうならとは永久(とは)に人語よわれは人間(ひと)青天に愁ひなきこゑをききとむ

雲などが流らふるよと見て居るに全身をかけて子に頼らるる

冬の欅勝利のごとく立ちていむ酔いて歌いてわが去りしのち

初老なる父が紅葉す陽に焼けし木の実ひとつぶ懐に抱き

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