2010年02月のアーカイブ

やや重いピアスして逢う(外される)ずっと遠くで澄んでいく水

春靄に濃くつつまれてうづくまる翁は抱けり零の明るさ

石の苔まろまろとありけふひとひいのち交換したきこの苔

みづからを日日解き放てよ大空へおのれほどけてみなぎらふまで

ひそひそと六十五年のかたまりの生きて動いて葱きざみ居る

同性を愛するけもの在りと聴き冬のくちびる水に寄せたり

ここからは聞こえない音たてながら重機は動く雨の地上を

出くはせる牛におどろき跳びのきし大松達知(たつはる)都会つ子なり

ブランコを思ひきり漕いだことはなく人生すなはち背中がこはい

けものらは滴(しず)ける闇に骨を解き冬の韻(ひび)きのとおく聞こゆる

たはむれにきくとしもなく振る土鈴こころひとつになりゆくばかり

「嫌(や)な子だね」吾(あ)に母言へりうからとの写真も直立不動の姿勢

宇宙塵うっすらふりつもるけはいレポート用紙の緑の罫に

夕闇に人を渡してひとときはまぶしきものか如月の橋

不気味なり何仕出(なにしで)かすか分からない無遅刻無欠勤つづける彼の

如月(きさらぎ)の雨は時どき温(ぬく)く降る八つ手の花たちぱちぱち弾む

いひたいことに突き当つて未だ知らない言葉子はせつなげに母の目を見る

ちちのみの父の見のこしし夢ならむ咲きいそぎたる梅に雪降る

アーガイル模様の母音ひびきだす北へと向かうバスに乗るとき

杉山に雪降りつづきなんでこう水墨画めく視界であるか

山ゆれて穂すすきゆれてまたしても風は言葉の先走るかな

かぼすの酸残れる指に編む帽子はじめて冬を迎うつむりに

照る月の位置かはりけむ鳥籠の屋根に映りし影なくなりぬ

石(いは)ばしる垂水(たるみ)の上のさわらびの萌(も)え出づる春になりにけるかも

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