2010年04月のアーカイブ

パパイアの種子を刮(こそ)いでいた指を口中に入れ雨を感じる

基督とモーツァルトの対談にそなえるごとく椅子ならびいる

残酷な包みをあけた日があつた 花水木、風に白をかかげて

一分ときめてぬか俯す黙禱の「終り」といへばみな終るなり

にっぽんはうつくしい国あらかじめうしなわれたるうつくしい国

虹を消すやうなる右手 教科書にカタカナを振る生徒を見れば

「青ですね」「青ですね。でもわたしたち歩行者ではありま「赤ですね」

風花の散るとき気づくパン抱きて俯き歩みゐしみづからに

「一つづつ」と決められて書く志望書の長所と短所縦長の文字

白抜きの文字のごとあれしんしんと新緑をゆく我のこれから

父母はなく君なく子なくひとりなる実感もなし春ふかきかな

人間の壊れ方にもいろいろとあるがわたしはひび割れている

いのちひとつただありがたく保たむにその他無用といふにもあらず

〈燃えるゴミ〉の袋にたまる紙オムツわが父はもうだれにも勝てず

我が腕に溺れるようにもがきおり寝かすとは子を沈めることか

バゲットの長いふくろに描かれしエッフェル塔を真っ直ぐに抱く

怒(いか)る時/かならずひとつ鉢を割り/九百九十九(くひやくくじふく)割りて死なまし

やれやれ、と僕は思った。ぼんやりと村上春樹の文体に寄る

埃吹くモスクに立てば屈葬の形に人ら礼拝をなす

ひとりごとつぶやきながら節ぶしのゆるみはじめてゆくにゆだねつ

薄日さす午後の階段しおからい耳たぶを持つあなたとのぼる

月させば梅樹は黒きひびわれとなりてくひこむものか空間に

枕辺の目覚時計に重なれる手と手に今日が始まらんとす

教室を飛び出したTを追いかける 「t」の横棒みたいに翔んで

提案に補足がありてみづみづしかる截り口は見えなくなりつ

むらぎものいかなる闇に落つるらむ言ひさして熄(や)むことばひとひら

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