2010年05月のアーカイブ

「いとよろし いといとよろし」残りたる歌評快晴明治あけぼの

天穹にふかく浸かりて聴きゐるは宙(そら)を支ふる山々の黙(もだ)

いつしんに樹を下りゐる蟻のむれさびしき、縱列は橫列より

男とはふいに煙草をとりだして火をつけるものこういうときに

右へでも左へでもなだれ打つときの「群」といふもののその怖さつたら

母死にて四日泣きゐしをさならが今朝(けさ)登校す一人また一人

鉄棒の上に座って口喧嘩 くるんとぶら下がって口づけ

ティーバッグのもめんの糸を引き上げてこそばゆくなるゆうぐれの耳

野の雨に揺れたつ朴のくらぐらと一つの花が大きくありし

しずまらぬ死者ら泳ぎてくるゆえに月光(つきかげ)白しわがまなかいに

或いは危ふからずや鯉が上下(うへした)に擦れ違ふときの感覚なども

薔薇(ばら)もゆるなかにしら玉ひびきしてゆらぐと覚ゆわが歌の胸

文明開化に置いてけぼりを喰ふほか無し一点一画文字書くやうでは

われといふ瓶(かめ)をしづかに盈たしたる素水(さみづ)と思ふ、九月の君を

かかかんと指で茶筒を鳴らしおり泣きたい俺はどこにいるのか

眠りつつベッドに垂らす子の腕よ腕より明日へ入りゆくものか

椅子に居て我れは未来を待つならず寄りも来ぬべきいにしへを待つ

こんなところに釘が一本打たれいていじればほとりと落ちてしもうた

昔語りぽおんと楽し大きなる女が夫を負うて働く

ベビースプーン右手左手に持ちかえる道具を持たされてかなしいか

日が歩(あゆ)むかの弓形(ゆみなり)のあを空(ぞら)の青ひとすぢのみちのさびしさ

ちちははのゐぬふるさとに帰り来て先づはひと泣きさせてもらひぬ

陰(ほと)に麦尻に豆なる日本の神話の五月るるんぷいぷい

絵本に示す駱駝の瘤を子が問へば母はかなしむその瘤のこと

夕闇に消えかかる手はほてりつつ水溜りよりつばめをひろふ

砂浜に立ち尽くしてもなにを見てゐるのか分からないときがある

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