2010年06月のアーカイブ

寝そべりて恋の歌読む古き代(よ)のたはごとなれば美しき歌

らつきようの玉かがやけるよろこびのごときを水に打たせてやりつ

東洋人ひとりだけなる会議にてしやべらねば塑像とまちがはれさう

撃たれたる少女の口より漏れ続く異国の言葉の「母」といふ語彙

トンネルの奥処に次の駅見えてあるいは全(また)きひかりの発芽

人のかたち解かれるときにあおあおとわが魂は深呼吸せん

果樹園のなかに明日あり木柵に胸いたきまで押しつけて画く

野の上の風に吹かるる青菜あり青菜は常にあたらしく見ゆ

われよりもしずかに眠るその胸にテニスボールをころがしてみる

おだやかな眼差しかへすキリンたちいつも遠くが見えてゐるから

晴れ上がる銀河宇宙のさびしさはたましいを掛けておく釘がない

寒ゆるぶ日の昏方を停りゐる貨車に靜まりて黑き車輪あり

捕へたる蜘蛛をかまきりは食はんとす優位なるものの身の美しく

声閉ぢて石になりたる石なればせめて月光に応答したまへ

ぼくたちは時間を降りているのかな膝をふわふわ笑わせながら

感情の水脈(みお)たしかめて読点を加えるだけの推敲なせり

水際には死ぬために来し蜂の居てあわれわずかにみだりがわしき

乳飲み子の学童の吾子の笑む写真一枚一枚亡き子のやうに

熱帯の蛇展の硝子つぎつぎと指紋殖えゆく春より夏へ

春山の草のくぼみに忘れたるつるぎを搜し一生(ひとよ)は過ぎつ

愛し抜かざりし青春よ山に来て鳥や獣のこゑが悼みくるる

デッサンのモデルとなりて画用紙に十字よりわれの顔は始まる

どこに行けば君に会えるということがない風の昼橋が眩しい

男の体なれど存分の反(そ)りを見すテレビのなかに球蹴るジダン

はさみで切って使いきられたねりからしチューブみたいな俺を愛せ

茸のごと朽ちざりしゆゑ紙のごと燃えざりしゆゑ石と化(な)りし者よ

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