2010年07月のアーカイブ

ぴょんぴょんと私が跳べば二人子は真似して跳べりどんな場所でも

母と子が互ひを責めてゐるやうな袋の小茄子触れては鳴りぬ

足のうらおのが手のひらに撫づるとき旧友交歓さながらにあはれ

ここはまだ平和ですのと咲いているひまわり風にゆれるひまわり

過ぎがてに立ちとどまりぬ魚網繕(ぬ)ふ人とかすかに心遇(あ)ひつつ

うらを焙りおもてを焙りまたうらを焙ればゆめの色なるするめ

迷鳥の飛来を告げしきみのこゑの用件となりしづまりてゆく

さらさらと真水のような飲み物を飲み終えて今日も齢を取らない

夏の雲ふくれゆく空にんげんはこゑ出して泣くすべを持ちたり

旨(うま)き物食(たう)ぶる顔のやさしきを恋ふるこころに旨き物もがも

城のごときものそそりたつ靑年の内部、怒れる目より覗けば

一枚の襖にすがるがに立てり母を支ふるいちまいふすま

助走なしで翔びたちてゆく一枚の洗濯物のやうに 告げたし

何にすといふならねども輪ゴム一つ寂しき夜の畳に拾ふ

耳掻きはたぶん黄泉にては不要ならむ生きをるもののためのこの形

夕闇にわずか遅れて灯りゆくひとつひとつが窓であること

絶間なく漕がれ続けてきしみ鳴る日常といふ脆きぶらんこ

つるつるに頭を剃っておりますが僧の中身は誰も知らない

会津野をほどろほどろに降り敷いて水雪(みづゆき)ほんにかなしかりける

ふるさとの土蔵の壁にかの日より立てかけられてある捕虫網

茶碗三つ並べて置くよ幸福は夕暮れに来てしづかに坐る

深き空ゆ吐息のごともおり来たる風ありて枇杷の葉むらをわかつ

あせたる を ひと は よし とふ びんばくわ の ほとけ の くち は もゆ べき もの を

沈黙は金か、金なら根刮(ねこそ)ぎに略奪されしピサロの金か

風鈴の音の通りたるみずいろの穴見ゆ闇のところどころに

わが指の頂にきて金花虫(たまむし)のけはひはやがて羽根ひらきたり

炭酸水のどいらいらとくだるとき覚えのなき記憶よみがへる

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