2011年01月のアーカイブ

風。そしてあなたがねむる数万の夜へわたしはシーツをかける

谷地に湧くみづが金だらひほどの光りそこに順序に鳥の来たるも

昨夜(きぞ)の雪消えぬ尾根より風来たり言葉いくたび人に滅びし

血は出口探して巡れるものならず夜の運河と遥か釣り合ふ

ちちははの生の緒しぼむ寒き昼うどん煮る湯が噴きこぼれたり

真夜中の鍋に林檎はほろほろと心細(うらぐは)しいのち煮詰められたる

「ぜんぶ好き」以外出口のない問いに「おっぱいです」で勝負して散れ

あはと消ゆる南のゆきのかろきをば降らせたやなうそなたがうへに

イヤフォンのコードに手繰るiPod nano わかさぎを釣る要領で

すこしわれ生き過ぎたのかとおもふとき森はしづかに大寒に入る

河豚刺しを皿より箸に剝がしおり弔辞少しく褒められて来て

誰がせし〈歌のわかれ〉か書き込みの多き歌集が箱で売らるる

ゲットーの四角い窓から降る雪をみているもうすぐ永遠に留守

あづまののけぶりのたてるところみてかへりみすればつきかたぶきぬ

何ぞ背後に燃やす画面やほれぼれと聞き取り易き移民の英語

曇天に赤きアドバルーン浮き上がり「つひのすみかがお買ひ得です」

ヨーグルトかきまわし白で白覆う とりかえしつかぬことはもういい

くちびるに迫る夕日のつめたさを海に告げたり海はわらふも

いきなり父は十露盤(そろばん)を投げつけつ歌などいぢりのぼせてをれば

居酒屋のほかげにたちて賤の男がかぞふる銭に雪ふりかかる

とつくにの丘にたしかに建っていた鐘楼あれはわたしのあばら

あれぬ日のゆふべの空はのどかにて柳のすゑも春ちかくみゆ

あらたまのわらべ歳神(としがみ)よく肥えてまろまろ笑ふ春の日の中

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