2011年04月のアーカイブ

君思ひ窓によりつつ牛乳(ちゝ)を飲むうすあたたかき日光を吸ふ

敗け方の下手なわたしは点になるまでのひばりを又聞いている

母性とふ地下水脈のみつからぬ身体にまぼろしのリュート抱きしむ

籠に飼ふネズミは産みしばかりなるその仔を静かに食みをはりたり

門扉までのタイルに溜る雨みずにそそぎてゆるき春の雨脚

右脇よりドレインに抜ける濁り水わが胸に棲む夕やけの色

咲く花が群葉(むらは)の青を混へつつ濁りゆく日よ 父と呼ばれて

夜のプール塩素の臭いに囊(つつ)まれてまず魂が腐りはじめる

不実なる手紙いれてもわが街のポストは指を嚙んだりしない

コピー機の足りない色に紫陽花はかすんでここに海があったの?

桜花なべてさかしまに咲く池の面(も)に笑顔いくつか泣き顔となる

聾児らの劇「幸福」はいま終へて静かなる拍手ながくながくつづく

月光の夜ふけをつんと雪に立つ蓬(よもぎ)のこゑを聴きし者なし

仕事終へ白布かければ計器類にはかに支配者のかたちをくづす

りすが駆け抜けた気がして夜明けまで三校を見つ  l(エル)一つ消す

唇にはりつく桜花まがなしく紙片一枚の関わりにいる

風ゆきつもどりつ幌を鳴らすたび四月闌けゆく三月書房

透明になる過程が見たい紙一重というところが見たい

浮彫(レリーフ)の校歌に夕のひかり射し家族は見上ぐ投票に来て

胸の傷かくして立てばさびさびと砂地に雨の降りたまりゐる

〝夕やみ〟と呼ばれてわれは振りかへる雑踏のなか探す目をして

菜の花にからし和えればしみじみと本音を聞きたい飛雄馬の姉さん

雲雀啼く春の野にきてくぐもれるこころはひたに延びむとするも

冷めてなほ唇(くち)に張りつく乳の膜おのがことばにおのれ欺き

福島弁を呑み込みて我はバスに乗る砂埃きらきらと光る朝なり

ガラス一枚へだてて逢えばひとはたれもゆきずりの人となりてなつかし

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