2011年07月のアーカイブ

馬駆けて馬のたましひまさやかに奔騰をせり したりや! 〈葦毛〉

花弁より飛び散り易き歌のむれ風に揉まれて来る黒人兵

わが生にいかなる註をはさめども註を超えつつさやぐ青葉は

ぬるま湯に蛸踊りつつ死を迎ふ快楽のむらさきのこむらがへり

ひいやりと猫過りたり元号に先帝の死後の時間を数ふ

ささやかな歌創るより忙しき一記者のわれに没頭せむとす

モデルハウスの扉(ひ)を鎖(さ)し出づるこの街の真偽おぼろに暮れそめむとす

この口は夏の蝉よりくりかえすどんなにあなたにみにくいだろう

緑蔭に〈不生不滅(ふーしやうふーめつ)〉蝉しぐれ妻と浴びをり〈不垢不浄(ふーくうふーじやう)〉

わたくしの絶対とするかなしみも素甕に満たす水のごときか

真夜中の鉄棒に手は見えざれど誰(た)が握力か残りてゐたり

朝おきて泡たてながら歯をみがくまだ人間のつもりで俺は

灰色の空に黙(もだ)せるNIKORAIの黒き円屋根(まろやね)われも黙せる

我の所掌となりし機密の書庫の鍵に赤く小さきリボン付け持つ

高層ビルに浅丘ルリ子のくちびるの半ば開いて雨ふりそそぐ

ゆふがほの解(ほぐ)れるときのうつつなるいたみはひとの指をともなふ

ホ-ムラン打たれてがくりとつく膝の膝はやむなく意志に負けしか

僕はいくつになっても夏を待っている 北蠅座というほろびた星座

かつて祖父は資産運用に敗れたり古き通帳に雨の匂いぬ

灯台に風吹き雲は時追えりあこがれきしはこの海ならず

だらだらとのぼれば坂は美しい「武道館」とふ筆蹟(て)が見えてきて

おみなにはなき愉しみに髭撫でて近代という男の時代

おほははのなづきにしろき花ふれりことのはなべて喪はしめて

わたつみへ帰りてゆける道すがらワインとなりてわれに寄る水

雨に濡れ夜より深き色となるスーツを干せばリビングの闇

稲妻が海を巨いなる皮として打ち鳴らしたる楽の一撃

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