2012年01月のアーカイブ

こよひはたれが逝く斑鳩の参道をまっすぐに来る無人の自転車

冬越えむとして厚き葉がかたはらの祈りのごとき幹に触れをり

ひつそりと濡れしガーゼが垂れてをり百葉箱の闇を開けば

ダイヤモンドゲームの駒を青と決めいちばん遠い場所にゆく旅

とよめきて悶すぎたる胸の野やたのしき鳥と眠は来ぬる

降る雪も過ぐる時雨も沁まざれば我が深淵のかたち崩れず

すでにして階下ゆふぐれ縹いろ跣(すあし)つまさきそとさし入れて

餅のかび百合の根などのはつかなる黄色もたのし大寒の日々

ドアを出(い)ず、――/秋風の街へ、/ぱつと開けたる巨人の口に飛び入るごとく。

キャベジンの空き箱ひとつ抱えつつ網棚はゆく電車に乗って

朝床にきく風音のゆたかなり鯉幟ながき尾をふりあぐる

カツ丼とおやこ丼とはちがふから慌てずに見よどんぶりの柄

油さしの長い触覚/油をさせば/歯車に踊る朝の心だ。

その名さへ忘られし頃/飄然とふるさとに来て/咳せし男

子を抱く妻残しきて時計塔に雀こぼるるさまに向かえり

足元に降り積む雪を見てをれどさびしくてわれは木などになれず

自転車を駆(か)るゆふぐれに天空にふたこぶ駱駝うまれては消ゆ

肛門が/一つしかない人間に/もう用はない/出ていきたまえ

まがね鎔け炎の滝のなだれ落つる鎔炉のもとにうたふ恋唄

人はみな馴れぬ齢を生きているユリカモメ飛ぶまるき曇天

ベランダの縁(へり)に器具もてしっかりと鋏みし布団ながなが垂らす

この沼に来し日は知らず発つ時を見ず幾たびか水禽に会ふ

うらぶれた汚れた孔雀冬ざれの日本にゐて日本に似る

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