2012年04月のアーカイブ

鳩時計鳴くを止(と)めしが鳩を闇に押しこめし如きこだはり残る

瓶にさす藤の花ぶさみじかければたゝみの上にとゞかざりけり

抑え難く感情の動く二日三日椅子に突き当り階に躓く

わら灰をつくりて心しづまるを帰りし家に感じつつ居る

刈られたる男の髪の燃えつきて夜の集落に理髪店閉づ

扇風機うごきてさらにむしあつし電車に立ちてわが運ばるる

あやまりにゆくとき地図にある橋は鷗の声にまみれてゐたり

寝てきけば春夜(しゆんや)のむせび泣くごとしスレート屋根に月の光れる

顔といふからだのいちぶに自意識のすべてが集ふぶだうのやうに

むらさきの桐の花骸(はながら)を累々と敷きたるやうな夕雲にあふ

さよならをあなたの声で聞きたくてあなたと出会う必要がある

われ主流きみ反主流なかぞらの梢へだてて咲く紫木蓮

愛すべき冥王星の小ささを誰も言はなくなりけり誰も

人間の生膽(いきぎも)を取る世となりて紅葉(もみぢ)の錦神のまにまに

花の散る速度と競ひ音階をのぼりたりわが少女期のカノン

驟雨に濡れし鉄骨の乾く時われは感情の処理にとまどふ

ムービングウォークの終りに溜まりたるはるのはなびら踏み越えてゆく

凍てつきし地(つち)に正午の光澄みものの象を残しつつ溶く

春の日のななめ懸垂ここからはひとりでいけと顔に降る花

ヒヤシンス薄紫に咲きにけりはじめて心顫ひそめし日

叫喚の声なきこゑの空ゆくと空みつるさくら仰ぎつつをり

おどろきて歩み逃げ去る丹頂は頸さし伸べて描かれにけり

ふとからだ軽くなりたるゆふぐれをさくら樹が産み落とす花びら

連続通り魔出没せしとふ路地の辺にうち捨てられたる扉(ドア)いち枚

メガバンク、メガバンクとぞ囁きて歯ならぬ桜咲き満つる国

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