2012年06月のアーカイブ

蔽はれしピアノのかたち運ばれてゆけり銀杏のみどり擦りつつ

デスマスクとられしおそれ水無月の油なす闇に顔をひたせば

冬の医師とわれは思へり椅子ひとつ持ちきて夕べ白くゐるひと

てふてふのてんぷらあげむとうきたてば蝶蝶はあぶらはじきてまばゆ

けものらは滴(しず)ける闇に骨を解き冬の韻(ひび)きのとおく聞こゆる

いじめっこの名前わたしに記憶なしあんのんと生きていろよ名無しで

芋切り干しの端を噛みつつ見上ぐれば晴れわたる空に恥じらいはなし

蝸牛つの出せ青葉の雨あとに人間のほかなべて美し

くれなゐの薔薇(ばら)のかさねの唇に霊の香のなき歌のせますな

ながらへて脆き前歯を欠かしめし白桃の核を側卓に置く

木の柵に進入禁止と記さるる言葉の後ろに回つてみたり

起こす声聞こえてたけどクワガタの卵になって眠ってたから

心とはそれより細きひかりなり柳がくれに流れにし蛍

妙にあかるきガラスのむかう砂丘よりラクダなど来てゐるやもしれぬ

高雲は夕映えしつつ鉄筋のアパートが曳く影の鋭角

ひ•な•あ•ら•れ フセインが鳥に撒きやりしちひさな食べもの闇夜に残る  

梨の実は固きままにて熟しゆく花びら落ちし日の清しさに

アスファルトの感じがよくて撮ってみる もう一度  つま先を入れてみる

立葵われにすこしの過去ありぬ帽子をやめて日傘をひらく

みんなまけみんなまけぺらぺらのマスクに顔を包んであゆむ

シルクロード展を出できて見る青葉嬰児のミイラ永遠(とわ)に乾ける

雨にも眼ありて深海にジャングルに降りし記憶のその眼ずぶ濡れ

小禽(ことり)の人にさからふくちばしををりふし汝に見ればさびしき

窪地に湛へゐるくらきものより生まれ飛びたつぎらぎらひかる翅たち

証明写真と同じわが顔嵌まりたり帰り来て入る部屋の鏡に

春の日に柱の割るる響きにも心はゆらぐ病みてこもれば

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