2012年09月のアーカイブ

つの かる と しか おふ ひと は おほてら の むね ふき やぶる かぜ に かも にる

逃げた女逃げた心よ逃げた詩よ吾飲めば君たちが酔いにき

おほかたの秋くるからにわが身こそかなしき物と思ひ知りぬれ

このゆびは人さしゆびと名づけられ星座を指した、戦旗を指した

馬は人より天にしたがひ十月のはがねのかをりする風の中

なんだってこんなに死んだり生きたり山林に踏みつけてゆく腐葉土の嵩

さしあたり今朝は虚無にも逢はざれば小走りに廊下行けりわたくし

怒るときも名差しができずいる父よ床の木目を見ながら怒る

けぢめなく吾のこころのおどおどとしたる恐れよ電車にをりて

一年を振り返りやがて口腔にひろがる路地を眺めていたり

悲し小禽つぐみがとはに閉ぢし眼に天のさ霧は触れむとすらむ

のびやかな影を曳きつつ老い人は午後の日差しに出逢いつづけぬ

貝の剥き身のようなこころはありながら傘さしての行方不明うつくし

口内炎は夜はなひらきはつあきの鏡のなかのくちびるめくる

うちつけにものぞかなしき木の葉ちる秋のはじめになりぬとおもへば

琥珀石透かすいつときゆふぐれは右の眼にのみ訪れぬ

忍ぶ軒端に 瓢箪は植ゑてな 置いてな 這はせて生らすな 心の連れて ひょひょらひょ ひょめくに

奥山に淋しく立てるくれなゐの木の子は人の命とるとふ

舗石に蠟石で字を描く子等は頭(ず)を垂れたままとっぷりと昏る

標本ビンに茸がふとる研究室を辞める話につき合いており

かぎり無き蜻蛉が出でて漂へば病ひあるがに心こだはる

蕁麻疹ちりちり熱くてねころ伏すわれにかぶさり来大き紅茸

日の沈めばうす暗き世の隅にゐていぢらしうわれ涙ぐむなり

栗茸(クリタケ)のごと月光に濡れながら造成地の道帰りてきたり

鼻梁ひと筋(すぢ)追ひ詰むるごと顔面を剃り終へにけり寒の水にて

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