2013年02月のアーカイブ

梅咲いて梅散ってたちまち終わりにき風ひかる二月われのきさらぎ

ひそかなる盗みに似たりひとりなる姪を抱きて行く街のうら

行きずりにタアバン白き少女見て塑像かと思ふくれぐれの橋

熟柿(うれがき)はわれを抱きし伯母のやうぽたぽたとして皮破れさう

さしだせるひとさしゆびに蜻蛉はとまりぬ其れは飛ぶための重さ

高々と資材吊り上げ夕焼けの中にクレーンなほ動きゐる

消燈のころ世をしのぶごとく来て美しかりき汝がサングラス 

遠い朝のように母来て縁側の夏のほとりに吸うている桃

『わが告白』なる自著の上に降りそそぐ批判の渦の中の春先

日常のわが段落に埋めおきし球根がけさ洎夫藍に咲く

カミガミノムレアソブ カノ/ムラサキノウミノ アカツキ/ アブラアビ トリハシニウキ/パケム ウィルムクエ カノ

排泄の音が聞こえる静けさに肩のしこりをほぐさむとする

別に嫌な人ではないが演出の方針なればギラギラと撮る

馬の屁のやうな匂ひの風が吹きぽつりぽつりと雨が降り来ぬ

書く前の会津八一が白紙を見据ゑてじつと立ち居る写真

曖昧に蓴菜(じゅんさい)すする昼の餉(け)や薄暮家族となりゆくわれら

かぎりなくかぎりなき雨かぎりある生を厭ひてかぎりもあらね

早春の風を踏みつつ来しなだり紅梅その他君の背も見ゆ

エントランス前で雪かきする人がはげしき息の挨拶をせり

救急車のサイレンに二つの表情あり近づく不安離(さか)る哀感

黒峠とふ峠ありにし あるひは日本の地図にはあらぬ

人が梯子を持ち去りしのち秋しばし壁に梯子の影のこりをり

きさらぎの雪にかをりて家族らは帰ることなき外出をせよ 

朝覚めし母に会へれども耳とほき人として未だこゑをかはさず

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