2013年03月のアーカイブ

死を畏れぬ秋の正餐をあはれみし竹山広も死の側のひと

えんがはにちちははのゐておとうとゐてネガのなかねぶの花咲く

夕づけるリア・ウインドウ曇りゆく運転の妻と我との息に

役にたつやうさまたげにならぬやう名札小さく〈ボランティア〉なり

まさか俺、一生ここで菓子パンを齧ってるんじゃないだろうなと

折る膝のなければ敗れし軍鶏はからだごと地へ倒れてゆけり

神経のいちにち分のゼンマイが一気に解き放たれてめまひす

としどしに臘梅紅梅咲きつげばこのまま長く生きむ気のする

あるいはそれは骨を握れることならむ手を繋ぎつつまだ歩いてる

ねこバスが迎えに来ぬかと大きめの傘さして待つ雨のバス停

ここはゴミ堆積地にて淡く澄むレインボーブリッジわれに架かれり

「聖家族教会」なんと作業中の工事現場にて教会にあらず

「青春」は存在しない「老年」も存在しないましてわが「死」は

バスの中誰も声せず幼きがあーあとふかきかなしみもらす

シャボン玉の中へは/庭は這入ません/まはりをくるくる廻つてゐます

ボルト屋が来てボルトのことながながと喋りてゆけりボルトかなしも

一日の終らんとする食卓に遠足の顛末妻は伝うる

あ、蝉と思ふたちまち揃ひ鳴く 台風すでに外(そ)れたるならむ

瓦礫の原に/三段くねり式の/電動こけしクマッコ1号が/一本 縦に在った

そら豆をかみつぶすとき母はイランの神の顔する

数寄屋橋ソニービルディング屋上に青きさんぐわつのみぞれ降りゐき

伏せ置ける棚の茶碗のなかの闇茶碗の外の闇と異なる

黄の色の粒の光をひろいつつ手のひらをそっとのばす母子草

くれなゐのつつじをまたぐ歩道橋いま天界の風ながれゐる

無抵抗主義者のやうなる草の根のおどろくばかり長し三月

ラジオより天皇陛下の声聞こゆどうやら戦争がおわったらしい

月別アーカイブ


著者別アーカイブ