2013年05月のアーカイブ

冬天に残る柘榴のひとつのみ瑕瑾だらけといふが愛しも

「俺はなあ」つぶやいてみる川風に力が沸いてくる気がして

芝の上(え)のわが椅子倒し昨夜またさびしく八ヶ岳颪ゆきしか

「中央線で死ぬことなんてやめてほら日高本線でのびのびと死ね」

わが家の貯えなどを妻に問う夜の川辺の歩行のおわり

すべり落つるその瞬間に白き皿は思ひ出だせり鳥なりしこと

カーテンのむかうに見ゆる夕雲を位牌にも見せたくて夏の日

寝るまえの円卓にしてしずやかに馬の肌のいろのパンあり

みどりのバナナぎつしりと詰め室(むろ)をしめガスを放つはおそろしき仕事

潮あかり顫へてとどく岩に寝て燕の誇りをわが誇りとす

歩みきて去年の団栗拾ひたりわづか濡れたる土の上より

堀りすすむ間道いくつも井戸をすぎずぶぬれの身をよこたえるまで

ソックスを履かず冷えるにまかせたる指をはつ夏の陽に差し入れぬ

きいんとひきしまつた空へしたたらすしづくは硝酸でなければならぬ

コロッケを肉屋に買ひて歩みつつ少年の日のよろこびを食ふ

枡の目に合はせてわれは踏み行くと足のずれきて跳ばねばならぬ

追ひ抜かれ後退しゆくランナーをとらへをりしがやがて突き放す

首とわかるまで網棚をころがりてゆくむこうまでゆく

まだ人のかたちをせるよ夜の駅の大き鏡の前よぎりゆく

目隠しをされたらきっと折り鶴の額のかたちを忘れてしまう

わたくしも此処で死ねるか姑(はは)の死にしベッドを借りてお昼寝をする

新しき黒もて黒を塗りつぶす分厚くわれの壁となるまで

病むわれは暗闇の中に立たされて壁泥(かべどろ)のごときものを飲まさる

窓の下を花輪はこびて行きにけり雨となりたる五分ほど前

ドアエンヂンなかば閉りて発車せしあはひゆさむき日が脚に射す

年下の若きからだをおもうときわが指先は草汁に触る

じりじりとセメントの袋担(にな)ふさま重心の移るさま見えてをり

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