2013年08月のアーカイブ

水甕の空ひびきあふ夏つばめものにつかざるこゑごゑやさし

団塊の世代の構成員として父はサボテンの棘を育てる

やわ肌の火照りの止まぬ発疹に似て筐体にランプが点る

逢ったのはインターネットそこはただ風の生まれる原っぱだった

4Bの鉛筆をもてはじめての円形脱毛塗りつぶすなり

指先の重たさはみづに沈むやう ゆらめきて髪の中に紛れた

爪切りはくちをひらきてわが生の真白き淵を噛みきりにけり

子を抱きて名取川渡りつつ転びさらに自分がわからなくなる

その位置に窓とめておく金属の穴と突起があつて、夕暮

手を出せば水の出てくる水道に僕らは何を失うだろう

太初に言あり、言は神と偕にあり、言は神なりき。

学舎より眩暈(めまひ)をもちて見下ろせる冷泉家の庭つつじの火の手

野を奔るけものの肉を食むゆゑにいざべる長き赤き爪もつ

客去れば椅子を二脚にもどしゆくしろき陶片のごとき陽のなか

醜の國のメリケンばらと神國のわが皇軍を同じに思ふな

すでにして海の匂いをなつかしむ仕事へ向かう雨の朝(あした)は

今日の水は流れいるかと問う我に年々異なる者が答える

印章を売る店すぎてわれと子は思い思いの夕焼けに遭う

「シュッ、コロリ」などと謳ふを笑ひつつ買ひしがまことシュッ、コロリ死ぬ

新宿駅西口コインロッカーの中のひとつは海の音する

雨の降はげしくなりし沙の上は明かるむまでに白き花殻

玄関にセールスマンが立ちしときたちまち対する外部と内部

待ちわびしコウホネひとつ水の面のひかり集めて今日咲きにけり

妻は妻のかなしみをもて家中に花かざりゆく雨の日曜日

鉱脈の輝き放つ星の下革ジャケットの匂い吸い込む

みどりごは鳥の形態(かたち)に腕ひろげ飛ぶと見えしがねむりゆくなり

踏み板が二つに割れて、君は聴いたか永山則夫の地に落つる音

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