2013年11月のアーカイブ

片脚のなき鳩ありて脚のなきことを思わぬごとく歩きぬ 

そのあとはわれの鎖骨をこんこんと叩いてきみは眠るのだった

手の甲に浮く老斑の濃く淡くひと恋いしこと長く忘れず

「そら豆って」いいかけたままそのまんまさよならしたの さよならしたの

傾けむ国ある人ぞ妬ましく姫帝によ柑子差し上ぐ

前籠に午後の淡雪いっぱいに詰め込んだまま朽ちる自転車

リタイヤ官吏背広着てカツカレー喰ふ憲政記念館食堂のあどけなき昼

アトリ科の鳥とのみしか分からぬが柿の枝より移りてゆけり

うみ おちて つち に ながるる かき の み の ただれて あかき こころ かなし も

つはぶきの花は日ざしをかうむりて至福のごとき黄の時間あり

われに向ひて光る星あれ冬到る街に天文年鑑を買ふ

とどろける環状七号線上の橋をしょんがらしょんがら渡る

百枚のまぶたつぎつぎ閉じられてもう耳だけの町となりたり

十月の雨そぼふりぬ公園にをさなごひとりゲートボールす

ソヴェートの韻律はかくも新しくわれらのクラスに没日反射す

まだ会社に慣れないせゐかオフィスでは鏡と犬が区別できない

熱き息頬に触るるかと思ふまで近づかしめて射ちはなちたり

しんじつを知りてしまいし人の名のまたひとつ神の指にて消さる

マシーンの赤きが光引きてゆく地上を愛すこの一瞬を

やがてわが街をぬらさむ夜の雨を受話器の底の声は告げゐる

満月はかさぶたみたいな色をして(あれが地球の影なんだね)

窓をうつ風雨となれる夜のほどろ目ざめて俺は青年ならず

上海は雨けふも雨、午後四時の気象通報おもひだしてる

石臼は石となりつつ 庭の上に白く光れり時雨のときは

眼鏡橋の眼鏡の中から眺むれば柳一本風にゆらるる風にゆらるる

ママ なぁに ママ 気泡の如き会話する 君小さくて小さくて 夏

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