2014年02月のアーカイブ

わが胎より出でたる者を何(なに)のそのと妻はためらはず子供の日記読む

かの子等はあをぐもの涯にゆきにけり涯なるくにを日ねもす思ふ

眼と心をひとすじつなぐ道があり夕鵙(ゆうもず)などもそこを通りぬ

雪しろの はるかに来たる川上を 見つゝおもへり。斎藤茂吉

いつにても顔の高さに海音のありて明るし寂し療園

今日の夕日はいたく重たくうす黒くビルの背後に墜ちてゆきたり

この町の見知らぬ人と一本の大根の上下分け合ひ暮らす

春畠に菜の葉荒びしほど過ぎて、おもかげに 師をさびしまむとす

まるまるとまるめまるめよわが心まん丸丸く丸くまん丸

かくばかり 世界全土にすさまじきいくさの果ては、誰か見るべき

生きて来てふっと笑いぬ今正午百合ケ丘は坂ばかりある町

三十年経て生々しこの家に充員召集令状を夜に携へき

灰色の蛇腹が延びて搭乗を待つ旅客機の腰にふれたり

放課後を纏はり来ては酸漿を鳴らす子ありきいま如何にある

ハンカチを泪のために使ふことなくなりて小さき菓子など包む

空蝉の毀誉褒貶にとらわれず一日一日をじわりと生きむ

現役を退(ひ)いていながら役職の順につづきぬ焼香の列

夫はたぶん知らないだろう抱きかかえるように拭きます便器というは

消火器の肩のあたりを拭きながらいつしかわれの肩と思いぬ

数ふれば二万五千日を越えてをり君にわかれしそのかの日より

ふうふうと父ふくらますならねどもふうふうとその手をあたたむる

白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ

腕時計を見る癖が出来真夜中の湯船の中で左手を見る  

しみじみとけふ降る雨はきさらぎの春のはじめの雨にあらずや

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