2014年03月のアーカイブ

地球ごと電源が落ち液晶といふ液晶が鏡に変はる

水漬く屍と死ぬべかりしを生きつぎて穢汚の裡に在るが宜しも

「このシーン雨降らせよう」と監督そんな感じだ結句の雨は

信濃路に帰り来たりてうれしけれ黄に透りたる漬菜の色は

卵焼き上手にできてわつはつはつ一人笑ひのこころ謎めく

うちなびき春は来にけり青柳のかげふむ道に人のやすらふ

薄れゆく記憶のひとつ 雨の日は算盤の玉が重かつたこと

ま昼どき畳のうへにほうほうと猫の抜毛の白く飛びつつ

病院のゆかに眠れずをりをりに覗く夫も眼あけゐし

死の穢れなどといふものを落とすためわが身に人は塩の粒まく

虫籠のやうな肋骨わたしにもありて夜々こほろぎが鳴く

蜜入りの南高梅の一粒をねぶりて足れるわが夕がれひ

筆圧を等分にして書かれたる君の手紙は白を深めつつ

こゝをまたわれ住み憂くてうかれなば松はひとりにならむとすらむ

父母がつけたるならん次々に名を呼ばれ氷上に出で来る選手

原発が安全ならば都会地になぜ作らぬとわれら言ひたき

除染とて地の面までも剥がれつつ見る見る町が無くなりそうな

昔むがす、埒もねえごどあつたづも 昔話となるときよ早来よ

百キロで走ってごらん掌を出せば触るる空気は乳房の如し

炎の尖は澄みて春暮のあかるさへのびあがりまたのびて澄みゆく

ハートには尖るところと凹むところひとつずつあり今凹むところ

夕の陽にみつまたの花咲きけぶる甦りくるいのちの明かり

無人野菜売場に小さき筍が男雛女雛のごとくに置かる

春の雨こおろこおろと降り来れば石蕗の薹たけてしまいぬ

鞍馬山歌の石とは知りながら君仮初めに住むここちする

いつしらに庭の白梅咲きさかり夕かぎろひのなかに散りゆく

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