2014年06月のアーカイブ

たよりなく白いお前が本当に褐色のあの蝉になるのか

み吉野の 象山の際の木末には、ここだもさわく 鳥の声かも

眼の悪き富榮が太宰に命じられ眼鏡はづして歩む三鷹は

家にてもたゆたふ命。波の上に浮きてし居れば、奥処知らずも

髪切虫籠に鳴かせて少年の日を脱けんとす我も我が子も

八雲立つ 出雲八重垣 妻ごみに 八重垣作る その八重垣を

夕映えに見つめられつつ手首という首をつめたき水に浸せり

水はやき小川の浮藻いまのわが心にも似てゆれやまぬかも

歳月の蛇腹一瞬ちぢみたりちひさなちひさな新生児見る

ヴェトナムに流るる血をも 些事とせむ 若き死囚の ほほのかげりよ

ひと一人おもひ初めたり行く道はうすももいろにひるがほの花

かげろふの尾羽を透きし死の象 音さやさやと国くづれゆく

車椅子同志のあいさつは体を横にふることで足る

瓢箪の鉢植ゑを売る店先に軽風立てば瓢箪揺れる

今宵また長く鳴りいる魔法瓶ふいに亡き鳥恋しかりけり

おたまじやくし小さき手足生えそめて天地に梅雨のけはひただよふ

頭ぶつけ胃はおどるとも砂漠ゆくバスはうしろがいちばん落ちつく

ひとしきりもりあがりくる雷雲のこのしづけさを肯はむとす

みちのべに埃(ほこり)をあびてしげる草秋は穂に出(で)て名はあるものを

梅雨雲にかすかなる明りたもちたり雷ひくくなりて夏に近づく

一日が過ぎれば一日減つてゆくきみとの時間 もうすぐ夏至だ

握っても摑みきれないかなしみの十指ひらいたままに果てにき

君がふと振り返りしを夜の駅の窓にかくれてわれは見てゐつ

地獄酒極楽酒のけじめなく二升たちまち火の粉となりぬ

花々に埋もれてわれも風のなき柩のなかにひと世終へんか

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