2014年07月のアーカイブ

紺いろに枝より垂るる茄子の実は悲哀のごとしふぐりの如し

カサブランカのひらきはじめた部屋のなか繋ぎ目のない時間を過ごす

宿ちかく花たちばなはほり植ゑじ昔をしのぶつまとなりけり

けし、あやめ、かうほね、あふひ、ゆり、はちす、こがねひぐるま夏の七草

川そこの光消えたれ河郎は水こもり草に眼をひらくらし

顔あげて川と気づけり明るさは思はぬ方よりきてしづかなり

枝蛙木ぬれひそかに鳴く声のきよらなるかも道細りつつ

忍ぶ軒端(のきば)に 瓢箪(ひようたん)は植ゑてな 置いてな 這(は)はせて生(な)らすな 心の連(つ)れて ひょひょらひょ ひょめくに

伊香保ろの八尺の堰塞に立つ虹の現ろまでもさ寝をさ寝てば

ひとりぼっちに働かされている洗濯機 思案してより反転をする

わがはだか にえをすらしも。いしふねの肌に触りつつ― 夜にいりゆく

再開発のビル建設は進められ古びつつある仮設住居(かせつ)を囲む

我が爪に深く食い入るくろき垢春深む夜の酔にきたなし

ひと穴に一匹づつ待つ蟻地獄ベージュの砂をへこませてゐて

昏れゆけば信濃は早き夕餉どき母のなき娘が膳運びくる

くらあい誰もゐない博物館大きなほとけさまがぼくをみつめてゐる

わが洞のくらき虚空をかそかなるひかりとなりて舞ふ雪の花

このごろの日暮れおもえば遠天を あじさいいろのふねながれゆく

わが袖は潮干に見えぬ沖の石の人こそ知らね乾く間ぞなき

臼歯ほどの消しゴムを取りに少年は小教室に戻りて来たり

あと絶えて浅茅が末になりにけりたのめし宿の庭の白露

ロベリアの青きが風と揉みあえり 巴御前は素手でたたかう

仄白く鉄路の死体雨しぶく一九四九年七月五日深夜

十年(とせ)前に断(き)りたる脚(あし)ふと見ま欲しく、訊(たづ)ぬれば、あでやかに笑ふ看護婦

みじかびのきゃぷりきとればすぎちょびれかきすらすらのはっぱふみふみ

亡き人の歌集を一日(ひとひ)ふた日読みつぎて思はぬところに幸(さきはひ)があり

風になびく富士のけぶりの空に消えてゆくへも知らぬわが思ひかな

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