2014年10月のアーカイブ

千両も万両もあかく実るなりわれから遠くわれは生きゐる

すすき原ほほけ初めたる山のなだり 父あゆみゆく わが歩みゆく

五種類の薬いつきに飲みたれば絵の具溶くごと胃の腑はあらむ

召さるる日あるひは近しひと夜おそく焚くべきは焚けり思ふべきは思へり

わが手より三歩駆け出し待っている自動改札茶色い切符

聞きわびぬはつきながつき長き夜の月のよさむにころもうつこゑ

家族の背それぞれ違へど丁度よい高さがありてカレンダー吊す

日向の国むら立つ山のひと山に住む母恋し秋晴の日や

人として生れたる偶然を思ひをり青竹そよぎゐる碧き空

さ夜ふくる窓の燈つくづくとかげもしづけし我もしづけし

店頭に積まれたゼリー透きとおり桃の欠片(かけら)を宙に浮かべる

白露の色は一つをいかにして秋の木の葉を千ぢに染むらむ

母の顎に一本のひげが伸びてきぬをかしくもある老い極むるは

たましひの見えざるところ崩れゐてをのれ黴臭くにほふと思ふ

指先より冷え初むる朝ポケットの切符の稜(かど)の尖りたしかむ

山かげを立ちのぼりゆくゆふ烟わが日の本のくらしなりけり

子の学費払い終えたるビルの狭間篠懸の刈られいるを仰ぎつ

つひにゆく道とはかねて聞きしかど昨日今日とは思はざりしを

真鍮の分度器はつかに曇る朝母よあなたは子を見失う

おぼろなる月もほのかに雲かすみ晴れてゆくへの西の山のは

自らの力出す如く焼かれゆくフライパンの中の一片の肉

やはらかに柳あをめる/北上の岸辺目に見ゆ/泣けとごとくに

この路をすきとほらせよ車椅子みづいろなればさかなもよりく

とほ世古りし丘にならびて子らの見るゆふ焼け空の中に還りぬ

枯れすすきドライフラワーであることに気付けり風にふわふわ揺れて

昨日まで莫妄想を入れおきしへなむし袋今破りてむ

残し置くものに未練はあらざれどうすきガラスのこの醤油差し

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