2014年11月のアーカイブ

身はたとひ武蔵の野辺に朽ちぬとも留めおかまし大和魂

杉やにのごと赤ぐろき夕ぐれよ行方不明のひとりみつかる

今日にかけてかねて誓ひし我が胸の思ひを知るは野分のみかは

今日は少し疲れてゐるのハロウィンの南瓜のやうに笑つて見せる

益荒男がたばさむ太刀の鞘鳴りに幾とせ耐へて今日の初霜

日記繰る手もとに風の吹込みて罌粟の押花破れて飛びたり

たまさかに人のかたちにあらはれて二人睦びぬ涙流るる

草花に目をとめ歩く余生とは秋の空気をふかく吸うこと

遊びたるひとつ水雷艦長に幼きこゑをのこし、まばゆし

こごえたる手に戻る血の熱くして生くるは佳しと孤り思ひつ

秋さぶる気配やや色づくと窓の森いくたびも大きたゆたひ

おいとまをいただきますと戸をしめて出てゆくやうにゆかぬなり生は

おりたちて今朝の寒さを驚きぬ露しとしとと柿の落葉深く

父の待つ昼餉に向かう父の中の母と話をしたくなる日は

鳴けや鳴け蓬が杣のきりぎりす過ぎゆく秋はげにぞ悲しき

大口を開けて己の重たさにうなかぶすダツラの煙雨にそぼつ

薪伐る鎌倉山の木垂る木を松と汝が言はば恋ひつつやあらむ

人間が行方絶ちしを蒸発と湯気のごとくに言ひし日のあり

時によりすぐれば民の嘆きなり八大龍王雨やめたまへ

朱鷺色のマフラーを解くそのせつなわれの蒸気が空にとけゆく

青年死して七月かがやけり軍靴の中の汝が運動靴

月面に咲くかも知れずと思ふほど月光に蕎麦の花が照りゐる

梓弓はるは来にけり武士の引きかへさじと出づるたびかな

七十にして砰(ずり)といふ文字を知りランドセル背負ふごとき嬉しさ

かへらじとかねて思へば梓弓なき数にいる名をぞとどめむ

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