2014年12月のアーカイブ

花ささぬ瓶(かめ)のごとしと人のいふとも、老づきて独りゐる時のこころの安けさ

あしひきの山の木末の寄生とりて插頭しつらくは千年寿くとぞ

浴身のしづけさをもて真昼間の電車は河にかかりゆくなり

年くると世はいそぎたつ今夜しものどかにもののあはれなる哉

半開きのドアのむかうにいま一つ鎖(さ)されし扉(と)あり夫と暮らせり

たが宿の春のいそぎかすみ売の重荷に添へし梅の一枝

開張する前翅は十三センチ越ゆるなるドクロメンガタ蛾は鼠の声す

あたらしき背広など着て/旅をせむ/しかく今年も思ひ過ぎたる

ガス室の跡なりと いう崩れた る煉 瓦昨夜の雨にしめれり

南の阿波岐の浜に我在りて想ふ事なし年暮れにけり

一生を直立歩行と決められて少年がカナリヤの籠さげてゆく

歳深き山の/かそけさ。/人をりて、まれにもの言ふ/聲きこえつゝ

刻んでる音がしてゐるやがて潰れて青いどろどろの現実が来る

大空を草薙ぎ払ふごとく来て無人攻撃機の金属音は

吊り皮の手首に脈拍たしかむる寒の迫りてくるはさびしゑ

吹く風に潔く散れ山さくら残れる花はとふ人もなし

告知されその名のごとく病み臥して足二本分の崖に立ちゐき

烏口の穂尖に思ひひそめては磨ぐ日しづかに雪は降りけり

両端に繭をやどした綿棒は選べずにいたわたしのようだ

母の国筑紫この土我が踏むと帰るたちまち早や童なり

待つことはある日なくなる 雀がつまめそうに散らばっている

むさし野は ゆき行く道のはてもなし。かへれと言へど、遠く来にけり

いやべつにああさうだつけ聞いてないそれでいいじやんもう眠いから

母の言葉風が運びて来るに似て桐の葉ひとつひとつを翻す

携はる放送の仕事の一つにて毒蛾育てゐる室に入りゆく

曇るとも何かうらみん月こよひ はれを待つべき身にしあらねば

うさぎの頭ぐいと持ち上げスポイドの薬液垂らす口の裂け目に

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