2015年01月のアーカイブ

「障害も個性」と軽く言ふなかれ苦しみ抜きて吾子は生きをり

冷凍庫に冬の氷はやせほそり水に戻せばぱちりとなきぬ

みな黒い芋虫地下鉄のもっそりゆれる中にてゆれる

カルテ棚逝きたる人と生ける者薄きボードに仕切られてをり

氷頭なまこ歯に沁むものを嚙みしめて夜の机にほれぼれとゐる

元気よくおりこうさんの返事するニュースの子ども 子どもは窮屈

函・表紙・扉それぞれに美しくそこを通つてからが言葉だ

小鳥図鑑なにゆゑ買ひしわれかともひと月経ちて思ひあたらず

球を中に一つに動くルーズ・スクラムこの時の間を心張り来る

あと何を買ったら僕の人生は面白くなり始めるのかな

冬の夜は風雪炎のあそびあり飼いならすべし死もまたあそび

たて笛に遠すぎる穴があつたでせう さういふ感じに何かがとほい

カポーティ―のお洒落短編読み終へていたく冷えたる鯖寿司つまむも

「新聞はとるのやめたの」親指と人差し指で画面広ぐる人

 遠見ゆる白鳥三百ふつふつと流れ地上に白き波立つ

母の手が子どもをなでて眠らせるやうに雪ふり雪ふりやまぬ

をりをりの時雨さびしき能登境藺は植え並めて村のひそけさ 

消印は二十世紀の冬の日で互いに今は届かぬ住所

雪炎は茫茫としてあかときの海もろともにひびきたるかも

本棚のむこうでアンネ・フランクが焦がれたような今日の青空

思ふことね覚めの空に尽きぬらむあしたむなしきわがこころかな

黒豆を浸けたる水がむらさきになりゆく時間を一挙に零す

不二ケ嶺はいただき白く積む雪の雪煙たてり真澄む後空 

商人(あきんど)のような声出し携帯の向こうの部下に夫は指示する

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