2015年07月のアーカイブ

蝉時雨見えざる壁を作りてはその内側に鳴き注ぎたり  

ローソンの袋の皺に眼はありてじいつと俺の方を見てゐる

ミスをして上司にひどく叱られた今夜男に会つたらだめだ  

喉元に銃のはさまりし夢さめてかなかなは暁を鳴きそめにける

教科書は絶対と思つてゐた夏のしづかな教師の頸太かりき  

常よりも敵のピッチののろしとぞ見るはすなはち進み抜きたる

いまだ掬はぬプリンのやうにやはらかくかたまりてゐるよ夏の休暇日  

三河地震に宿舎はつぶれ二ヶ月余余震におびゆる日の続きたり

ふる雨にこころ打たるるよろこびを知らぬみずうみ皮膚をもたねば  

青柿のをさなくひかる梅雨過ぎて「生活学校」廃刊となる

2040年の夏休みぼくらは懐かしいグーグルで祝祭を呼びだした  

江ノ島の海にクラゲが出始める前の海中われも泳げり

少女期はポーシャに今はシャイロックに肩入れしつつシェイクスピア観る  

麦うれて細い流れが光っている わたしでない農夫が鎌研いでいる

死ぬまでにせぬこと出来ぬままのこと考えてゐる箸洗ひつつ  

よろこびは地の上の影 北極星をめぐりて永遠に星座はうごく

月と海よびあひながらおんおんと水みちてくる稲佐の浜に  

ちちんぷいぷい 何の呪文でありしかなТPPを見ざる日はなく

バタ足のふと軽くなる一瞬あり水は静かにわたしを恕(ゆる)す

生口島の青いレモンをさし出せば母はてのひら合わせて受ける

日本人なのかなわたし琉球人だよねと言ひし人思ひ出づ

アルタイルならぬ老い人ベガの待ちゐるとは思はねど橋渡る

むかしへむかしへ戻りゆく母ひきもどすいっそうの舟わたしにあらず

少女ふたりわれの視界をふと出でてまた戻り来ぬそよぐごとくに

右クリック、左ワトソン並び立つ影ぞ巻きつる二重螺旋に

田の水にうつる夏山かなたにはまだかなたには死が続いている

うずく、まるわたしはあらゆるまるになる月のひかりの信号機前

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