2015年09月のアーカイブ

ゆびあはせ小窓つくれば三角のあはひをよぎるあの夏の雲 

吾が妻の笑まひは清し傍にみどり児はまだうぶ毛ぬれたり

ゆつくりと二人でのぼる長谷寺の石段一つひとつ大切  

ばあちゃん家いきたくならない? 冬に窓あけてソーセージゆでてたら

取るの字は耳を取るの意 月光のしじまの中に耳取られたり 

沖あひの浮きのごとくに見えかくれしてゐるこころといふけだものは

ねえ武器をすべて捨てたらどうかしら足の踏み場がなくなる前に 

つくづくとゆめにしあへればふかどより少年魂のいたみふきあぐる

日が差せば石はぱつくりと口ひらき太古の空の色を語れる

草の実も木の実も浄き糧ならず鳥よ瞋りて空に交差せよ

いまもなほ左脚を軸に立ちあがる突撃に移るときのごとくに  

百日紅のひかりのはだら地にゆれて忘れてゐたる約束ひとつ

赤ちゃんの産着を着せてゆくように新刊本をフィルムで包む

わが恋に汁椀ほどのみづあかりあれば朝夕机辺にひかる

二十五年勤めつづけて女たちまだ胸に飼ふ透明な鳥

声なきは静かな脅威蟻の群れにじつとりと昼を囲まれてゐる

秋空にさらすわが身は何物ぞこれっぽっちの裸おにぎり

一山をゆるがしすぐる風のこゑしましはやがてひそまりにけり

私の中の古さとあなたが言い放つものがやさしさなのです私の

むらぎものこころいこはずいくとし月すぎこしはてのこの疲れかも

〈物言わぬ兵士〉にされし馬ありき誰もだれもが必死に生きて

本棚の上に鏡を立てかけてあり合わせから始まる暮らし

ああぼくが愛した白いブランケットに今年の秋の光が積もる

存在の尊厳として草光ることばとならぬ生といふべく

海に向く硝子のレストラン音もなくサヨリのやうなボーイ寄り来る

深々と裾野を埋めし雲の海のいまだ見えゐて山は暮れゆく

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