2015年12月のアーカイブ

鳥は飛ばねばならぬ 人は生きねばならぬ怒濤の海を 飛びゆく鳥のように

問ひつめて確かめ合ひしことなくてわれらにいまだ踏まぬ雪ある

 丘を越え谷をわたりてしろがねの薄波寄る島をしぬばむ

ぴあのぴあのいつもうれしい音がするようにわたしを鳴らしてほしい

白髪薄夕日に燃ゆる荘厳を息つめてみつつすべもあらめや

サンタ役させてもらっていたのだと気づく日が来る 輝くツリー

わが部屋の前の木のみが芽吹かない 私が影でごめんなさいね

さんさんと夜の海に降る雪見れば雪はわたつみの暗さを知らず

この日ごろ遊歩道には氷とも泥ともつかぬものの落ちをり

みごもりのとまどひ深しフレスコに横顔みせてマリアよマリア

こがらしのあとの朝晴間もなくて軒うすぐらみ時雨降るなり

傘の上ほどろほどろに雪こぼれ地蔵のこころにたたずむわれは

航跡が消えずにのこる夢を見た びるけなう、びるけなう 遥かなり

感情の波のまにまにあらはるるドリアン・グレイの老いし肖像

小雪に凍みた茶褐色の風景があり、うしろ影をみせて行くわが子を見た

風を身にあつめて帰りたる夜にわれの内部に篠笛は鳴る

思慕清く胸こみあげて複製のちいさき絵にもしばし救はる

真直なる生は誰にもあらぬもの雪原を行きし人の足跡

窓もたぬ夜の壁面に影うつる冬木のいちやう枝しげくあり

ノルウェー産ししゃもぢりぢり炙りたり地球寒冷化を説く人もいる

あたらしき羽織の紐のともすれば空解けすなり初冬の夜は

うっすらと脂肪をつけてゆくように貯金を増やす一年だった

かへりみてあやまちなしと誰が言はむ人と物との歪みしげき世に

横にいるわたしはあなたのかなしみの一部となりて川鵜みている

うたかたの職場におのれ尽くし来ぬ指のあはひを風の抜けゆく

光ふるさなか石原吉郎の断念を思ひ冬の草ふむ

慰安婦のほとなる深き井戸の底ぬばたまの天黙し在りしを

月別アーカイブ


著者別アーカイブ