2016年07月のアーカイブ

客電が落ちれば良夜/河岸に劇場〈銀河〉現れて消ゆ

桜吹雪のなかにカメラを翳しいる娘のからだ少し傾ぎて

停電の夜に着せたる赤い服あらたな犬に着せて歩めり

くちばしの散らす花びらひよどりをひかりは誘ふ次なる枝へ

五年目の一斉捜索 私の時は五日経ったら忘れて欲しい

袖振りあふの多少の縁と五十年思ひ来たりて不便あらざりき

燃えたぎる鍋を見すえて だいじょうぶ これは永遠でないほうの火

はる四月白くさびしき花水木もうすぐ夫のなずき削らる

見るかぎり赤信号となる道を渡りゆくなり影もたぬもの

棚の本を読みて箪笥の服を着て足るべし残生の心と体

雲梯のうえから見ていた校庭にわたしがいないことの正しさ

こぼされた砂糖の最後のひとつぶのかなしいひかり降りしきる ガザ

あおむけに書けばかすれてゆくペンのちいさなちいさなボールをおもう

ふかくふかく潜る鯨のしづかなり 酸素マスクに眠りゐる人

氷[ひ]の熱は氷室に満てりみまかるとみごもるの語のふしぎな相似

かはせみは雫こぼして枝にもどり水中の魚一尾消えたり

足を引く老[おい]が乗り込む夕暮のバス停に光の函[はこ]を見送る

あかね雲かがやく街の古書店にイスラム経典しづもりてあり

新学期はじまりおわりミニチュアの銀の複葉機をもらう夢

ハイヒールにゆく春の街身の芯を立てれば見えくるものあるやうな

昔話の途中で寝入りし子の側で思う「めでたしめでたし」の先

やわらかく風に靡ける娘のシャツは青葉の庭に花となりたり

げんげ草一[ひと]とこいたく伏してあり若者たちの角力[すもう]とりしあと

ばうばうと風にかがやくのみにして水を噴かざる噴水群よ

現状を打破しなきゃって妹がおれにひきあわせる髭の人

虫よけにあなたの植えるマリーゴールドこんな形の防衛もある

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