2016年08月のアーカイブ

寒波襲来の予報流るる一月の晦日の夜更け母は逝きけり

月に一度四人家族にもどる日のハイビスカスは夜を咲きつぐ

誤りて設定すれば誤りの時きざみゆく家電の時計

飲食[おんじき]の最後にぬぐう白き布汚されてなお白鮮[あたら]しき

青空を殺し続けて飛びゆけるジェット機の下に鳥の空あり

江戸の人あさがおに身上つぶせりと友の失恋聞くごとくいる

いつの世もTaxed enough already 茶箱を投げるなんてしたくなし

はい、恋に捨ててもいいと思[も]ふ命すてずに今も持つてをります

甲高くをさなが母を呼びてゐる 黄落のもたらす不安ならずや

水たまるところをえらび雲はかたちを変えてはあそぶ

ろうそくの明かりの芯で揺らぐのは人のなかなるけだものの性(さが)

檸檬の実 雨に濡れつつゆっくりと明るい檸檬の色になりゆく

浴槽をさかさになつて洗ひゐるこのままかへらうあたたかい海へ

たまさかに共棲はじめた六十歳代皆若き日の海市見せ合う

にはとりも備品であれば監査前に何度もなんども数をかぞへる

残酷な童話は語り尽くしたと足腰伸ばすあたしの老婆

兵器考案その手すさびに創られて撃たれつづけるコの字型針

栃の実を拾へる童子見張りをるけもののけはひ、紺青の時間[とき]

新春の空の深さをはかるべく連なる凧を沈めてゆきぬ

扇風機を胸に抱きてはこぶときしづかにまはる透明の羽根

我にまだ死刑を肯(うべな)う心あり窓に当たりて窓伝う雨

iPhone谷間に挟めばパイフォーン着信音に胸ときめいて

生年に付く〈~〉(なみきがう)生きゐるはなべて尻尾を揺らしさまよふ

わたしの影が私の鍵穴であるやうに霧雨の空を飛べる黄揚羽

その旅は行けなかつたと言へぬまま紅葉はどうかと聞かれてゐたり

大輪の花火はじける五億年後にぼくたちの化石をさがせ

矜持なきわが性なれば昼間より咲くゆふがほの花を見てをり

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