圏外のひとはドラマと呼ぶわれの歴史は選挙権なき歴史

       キム・英子・ヨンジャ『百年の祭祀(チェサ)』(2012年)

 

作者は1960年生まれの在日韓国人二世である。「二つの祖国」を持つ、と聞けば、つい「ドラマ」のように思ってしまう人もいるのだろうが、そうした歴史認識の人たちを、作者は「圏外のひと」と見る。

今年は戦後70年ということで、戦争や戦後の歩みを振り返る報道が盛んにされてきたが、この「選挙権なき歴史」もまた70年である。戦時中には、所定の税額を納めた在日朝鮮人の人たちには選挙権があった。こうした史実を思うとき、在日外国人に参政権を認めない現状を何ら検証しないまま、選挙権年齢が20歳以上から18歳以上に引き下げられたことには落ち着かなさを感じてしまう。居住年数などの条件によって地方参政権を認めてはどうか、というような論議がほとんどないことを寂しく思う。

作者は決して声高に「選挙権なき歴史」を批判したりはしない。波乱万丈の韓流ドラマについて「出生の秘密をてんこ盛りにしていよよ華やぐ韓国ドラマ」と詠ってみせる懐の深さも持っている。しかし、だからといって私たちが「圏外のひと」であってよいわけではない。ドラマではない現代史をもっと考えたい。