秋桜、秋明菊に女郎花 わが赤毛のアン恍惚と立つ

       星野秀子『秋の使者』(2014年)

 

コスモスも、シュウメイギク、オミナエシも、少しばかり寂しげな花を咲かせる。色も形も派手ではなく、いかにも秋という季節にふさわしい愁いを帯びている。作者は、そんな秋の草花をことのほか愛しているのだろう。

そして、花の名に続いて、「赤毛のアン」が登場するのが、何ともいえず楽しい。アンは、ありふれた日常の風景を、自分だけの命名によって輝かせる名人だった。「歓喜の白路」や「輝く湖水」を覚えている人は多いだろうが、彼女は植物にも名を付けた。グリーンゲイブルズの桜は「スノークイーン」、窓枠に置かれた鉢植えのゼラニウムは「ポニー」である。この作者は、アンと同じように美しいものが大好きで、可憐な秋の花の見た目のみならず、名の味わい深さも愛でているに違いない。

「シュウメイギクですって? だめだめ、せっかく秋明菊という字があるんですもの。その漢字を思い浮かべながら呼ばなくては」――赤毛のアンになりきった作者は、そんな台詞を想像しながら、野にうっとりと佇んでいたのではないだろうか。