飴玉の包み紙をすてるまえに折りたたむひと そのくせつめたい

       北川草子『シチュー鍋の天使』(2001年)

 

少しどきっとさせられる。私にも飴の包み紙や個包装のクッキーの袋を折りたたむくせがあるからだ。時には、チョコレート菓子を包んでいる銀紙で鶴を折ったりもする。そんな手遊びをする人が気持ちの濃やかな人かと言えば、必ずしもそうではない。

この作者は相手をじっと見つめている。恋の相手ではないかな、と思う。こんなに丁寧に包み紙をたたんでいるのに、私に対してはどうしてあんなにも冷たい態度をとるのだろう--。紙を折りたたむ優しい仕草と、「つめたい」の対比がこの上なく効いている。一字あけも効果的だ。そして、「そのくせ」に込められた、なじるような気持ちが切ない。捨ててしまう包み紙なら、どうしてそんなに大事そうに折りたたむの。私のことも結局、あなたはそういうふうに捨てるんでしょうね……。

短歌は小さな詩型なので、ディテールが大事だ。広大な風景であろうと、小さな花であろうと、対象を丁寧に観察する忍耐と注意力が求められる。相手の何気ない仕草やくせに着眼することで、恋の歌は読む人の胸に迫る一首になる。

作者は2000年、病気で亡くなった。まだ30歳の若さだった。幼年期をなつかしむ、やわらかな抒情が魅力だったが、この歌は、深いまなざしと固有の文体をも持つ人だったことを示している。