岩田正『泡も一途』(2005年)
家族と写った写真を取り出して見る。
そこには何を気張るのか、精一杯にまっすぐに立った子どもの日の自分がいる。
なんだったんだろうなあ、こんなに頑張ってと少年の日の自分を哀惜するような思い。そしてそんな自分に母が放った声がよみがえる。
お母さんのことばは歯切れがよくて、関東の匂いがする。そして、しゃちこばったことは嫌いな人だったんだろうな、とその人物像を思う。
あけすけなものいいだが、その隔てのなさは揺らがぬ絆があってこそのもの。歌のなかの<わたし>の方も、そう言われた時のズキッとしたような思いとともに、他のどこにも見出されえない母子の間を、今、遠く思い返すのだろう。
母との絆は、こんな風な確かめ方もされるものであることを思う。