残酷な包みをあけた日があつた 花水木、風に白をかかげて

魚村晋太郎『銀耳』(2003年)

 

 

上句から何を想像するだろう。

恋人からの包み? どんなもの。

心をこめて贈ったものが、送り返されてきたとしたら……。

またたとえば、ひそかに思いを寄せている人から、生活臭のつよいものを贈られたりしたらショックだろうな。十分、残酷といいうる。

ちょっと俗っぽいけれど、意中の人が誰かと写っている写真が入っていたりしても厄介。

ふっと困窮の硺木が、白秋から美しい『邪宗門』を届けられた時のことを思ってみる。

 

「残酷」の性質、度合いはさまざま。ただ、いずれにせよ、そこに何らかの物語が想像される。

その「物語」に、風に揺れる花水木が白く添う。

 

「あつた」の言い切りに合わせた、「花水木」のあとの読点には、思いがその一瞬停止した感じが反映されているようだ。

 

まず「残酷」の一語でインパクトを与え、だが「包み」の中身は空白に。ここでたっぷり読者にああだろうか、こうだろうかと思わせるところを残す。そして一字空け以降の、甘やかにも爽やかな詩情でくるみこむ。

どう読者に切り込むかがよく考えられ、そして洗練されている。

 

感受やことばのセンスの冴えが生む独自の詩情に魅せられる一冊。

 ・外を向いて俯いてゐるひとたちが綺麗だ 風の夜のローソン

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